【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
6月30日に実施された「第3回入院医療等の調査・評価分科会」では、一般病棟入院基本料の状況について現状を示した上で、急性期医療に関わる評価の在り方についての議論が行われた。前稿では、それに関連し、ICU等の有無による診療実績の差をどう評価するかについて取り上げた。さらに、7月8日開催の第4回同分科会では、回復期入院医療を取り巻く状況について触れた後に、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟についての議論が行われた。
第3回の議論においても、地域一般入院基本料については取り上げられたものの、地域包括ケア病棟はメインの論点としては取り上げられていない。つまり、診療報酬上の立て付けとして、地域包括ケア病棟は急性期機能ではなく、回復期機能であるからだと考えることもできる。とはいえ、地域医療構想における機能の位置付けと、診療報酬を混同すべきでなく、「地域医療構想は診療報酬に寄り添っていく関係」でもある。資料は、2018年度診療報酬改定において入院医療の評価体系について整理されたものであり、ここでは地域一般入院基本料や地域包括ケア病棟入院料について「急性期医療から長期療養」と記載されており、急性期とも、そうではないとも捉えることができる。
資料
厚生労働省ホームページより
本稿では、18年度および20年度の病床機能報告のデータから、各病院の届出入院料と病床機能報告において選択したデータの状況を整理し、急性期機能の意義について考えていく。
グラフ1は18年度の病床機能報告データから、病棟ごとに届け出ている入院料別に4つの機能のいずれを選択したかを示したものである。ICU等については前稿と同じ定義(※)で、ICU、HCU、救命救急入院料、SCU、NICU・GCU・MFICU・PICUの特定入院料としており、これらは病床機能報告において高度急性期として届け出ている医療機関が98%を占めていた。病床機能報告のオープンデータは入力間違いも散見されるため、ICU等はほぼ全てが高度急性期という認識なのだろう。
また、特定機能病院の一般病棟7対1についても、その80%が高度急性期であるのに対して、急性期一般入院料1では23%にとどまった。病床機能報告の届出はICU等の特定入院料だけを高度急性期とする病院もあれば、「うちは全て高度急性期」という7対1もあるわけだ。
ただ、全体的な傾向を見ると、急性期一般入院料および地域一般入院料では、急性期としての届出が多いことが分かる。一方、現実に目を向ければ、地域一般入院料よりも地域包括ケア病棟の方が高単価で収益性が高いことが予想され、事情があって転棟できないというケースもあるだろうが、地域包括ケア病棟に転換した方が病院として賢い選択だといえるだろう(連載第91回参照)。
次に、地域包括ケア病棟の病床機能報告の状況を見ると、その多くは回復期機能であるが、入院料1-3においては約20%以上が急性期機能として届出を行っている。もちろん、手術患者を地域包括ケア病棟に直接入棟させるケースもあり、これらは急性期機能とも考えられるが、その多くは白内障などの短期症例が多いという傾向がある(連載第106回参照)。
もちろん、診療報酬の届出と病床機能報告は別問題であるから、各病院がどう考えようと自由だとも言えるが、急性期病棟からの院内転棟が多いことが、20年度改定時の議論に引き続いて今回も分科会で指摘されている。それぞれとの整合性を考えた病床機能報告が、最終的には望ましいとなるだろう。
なお、回復期リハビリテーション病棟については、ほとんどが回復期機能としての届出となっている。
このことを20年度の病床機能報告で確認すると、全体的な傾向は変わっていないが、地域包括ケア病棟における急性期割合は低下しており、回復期機能としての報告が増加しつつある=グラフ2=。
グラフ3は、地域包括ケア入院医療管理料について病院全体の一般病床の規模別に見たものであり、100床未満よりも100-199床の一般病床を有する施設で、急性期機能としての届出が多かった。病室単位での届出が可能な地域包括ケア入院医療管理料については、200床に近い比較的大きな病院の方が急性期的な利用が多いのだろうか。
(残り1730字 / 全3570字)
次回配信は8月2日5:00を予定しています
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】