【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■ヒアリングはさまざまな病院が参加するDPC制度における大きな分岐点か
6月16日に開催された中央社会保険医療協議会の「入院医療等の調査・評価分科会」で、脳梗塞や心不全などの5疾病において「医療資源投入量の少ない病院」や、院内転棟割合がDPC対象病院全体と比べて高くなっている「在院日数の短い病院」を対象に調査票を送付し、ヒアリング対象となる病院を選定することが了承された。
2019年度の分科会で指摘されていた通り=資料=、粗診粗療の懸念に対し、適切性を検討するためには調査票を送り、ヒアリングをすべきと判断したことはもっともである。
資料 DPC/PDPS等作業グループにおける分析で指摘された懸念事項
厚生労働省 2019年度第9回入院医療等の調査・評価分科会(2019年10月3日開催)※赤字は筆者による
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000554270.pdf
現在、DPC対象病院は1,755病院まで増加した=グラフ1=。また年々、100床未満、100床以上200床未満の、中小病院の制度参加が増えている=グラフ2=。結果的に、病床規模も、医療提供体制も異なる、さまざまな病院によりDPC制度が運用されている現状において、診療内容のばらつきが生じていることは事実だろう。
グラフ1 DPC対象病院数の推移
厚生労働省 2021年度第2回入院医療等の調査・評価分科会(2021年6月16日開催) 資料を基に作成
グラフ2 DPC対象病院数の病床規模別比率推移
厚生労働省 2021年度第2回入院医療等の調査・評価分科会(2021年6月16日開催) 資料を基に作成
■力士が押し寄せる食べ放題の回転寿司屋
例え話だが、DPC制度を「回転寿司屋の2時間食べ放題」制度だとする。A店には、連日連夜お腹をすかせた力士が大勢やってきて、たらふく食べていった。一方、B店は少食な人ばかりがやってきて、少し食べて満足して帰っていった。A店もB店も来店客数が同じならば、売り上げも同じである。しかし、食べた量には大きな差があり、A店はコストがかさみ、B店はコストがあまりかからない。当然、A店よりB店は利益が多くなる。
また、C店もA店同様、力士が大勢やってくるのだが、たくさん食べられてはたまらないと思い、シャリのサイズを大きくし、寿司ネタのサイズを小さくした。結果的に、B店ほどではないものの、A店よりも利益が多く残った。A店は、食べ放題メニューの値上げをするか、もしくは食べ放題自体をやめたいと考えるだろう。一方、B店やC店は、食べ放題を積極的に客に勧めるかもしれない。
DPC制度の話に戻すと、制度の公平性を考えるならば、B店やC店に当たる病院があるのか否か、あるならばどのような事情か確認しなければ、A店に当たる病院は不満を抱くに違いない。また、意図的にシャリを大きくしたC店はDPC制度における粗診粗療に該当するのだろうか。また、B店は標準化から外れているのだろうか。
現行制度下において、A店、B店、C店のいずれに当たる病院であっても、診療報酬上のルールは逸脱していない。とはいえ、この先もこの制度を運用する上では、公平性の観点から、解消しなければならない課題であることも事実である。
■留意すべき2パターンの病院
冒頭に挙げた調査票送付対象の2類型について、どのような特徴を有し、何が問題とされているのか整理する。このパターンを理解することで、自院が「急性期医療の標準化」の議論において、外れ値となっていないか考えてもらいたい。
医療資源投入量の少ない病院 ⇒ 「慢性期病棟型」
院内転棟割合が高く在院日数の短い病院 ⇒ 「ワンバウンド型」
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次回配信は7月21日5:00を予定しています
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