【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
6月30日に開催された2021年度第3回入院医療等の調査・評価分科会では、「急性期入院医療について」の議論が行われ、入院基本料別に、他に届け出ている治療室の状況が示された。特定機能病院入院基本料(一般病棟7対1)では、全ての医療機関でICU等の集中治療室の届出があるのに対して、急性期一般入院料1を届け出ている施設では7割超にとどまっていることが明らかになった=資料=。
同分科会では、急性期一般入院料1を届け出ている施設に急性期医療をしっかりとやる覚悟があるならば、ハイケアユニット等の届出をしており、その有無によって診療実績に差があるかを把握すべきだとの意見があった。
資料 ※クリックで拡大(以下同)
厚生労働省ホームページより(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000799789.pdf)
急性期医療の議論は、とかく急性期一般入院料1-7に限定されがちだが、より重症な患者を受け入れる医療機関ではICU等の集中治療室を保有することが一般的であり、それらの有無によって診療実績が異なる可能性は十分にある。
本稿では、ビフォーコロナでデータが安定している18年度の病床機能報告のデータを用いて、ICU等を有するか否かによる診療の実態を明らかにし、今後の在り方について私見を交えて言及する。
なお、上記の20年度調査データは、急性期一般入院基本料、特定機能病院入院基本料、専門病院入院基本料について1,900施設が調査対象となり、942からの提出があり、回収率は49.6%だった。一方、本稿で扱うデータは、18年度時点の一般病床を有するほぼ全ての病院が対象である。
グラフ1は、入院基本料別のICU等の重症系ユニットに関わる特定入院料の届出状況である。急性期一般入院料1について、いずれかのユニットを届け出ている割合は55%である一方、特定機能病院では100%であった。病床機能報告のデータには入力誤りも散見され、一部データクリーニングをしているが万能ではないものの、ほぼ全数データであるがゆえに、一定の傾向は示すと考えてよいであろう。
なお、作業に当たっては厚生労働省の集計とは異なり、日本集中治療医学会(jsicm.org)の分類に倣い(icu_hcu_beds.pdf)、ICUを「2対1の看護師配置を行う特定集中治療室管理料1-4、救命救急入院料2・4」とし、HCUを「4対1の看護師配置である救命救急入院料1・3および4対1、5対1のハイケアユニット入院医療管理料1・2」、さらにNICU等には「NICU・GCU・MFICU・PICUのいずれかを有する施設」というくくりにしている。
グラフ2は、一般病床(稼働病床)ごとのICU等の届出状況であり、病床規模が大きくなるほどその割合は高くなり、分科会データと同様の傾向があった。
グラフ3は、DPC/PDPSにおける医療機関群別に見たものであり、大学病院本院群およびDPC特定病院群ではほぼ全てがICU等の届出があるのに対して、DPC標準病院群では約半数にとどまり、DPC参加病院以外ではほぼ届出がない状況であった。
グラフ4は、総合入院体制加算の届出状況とICU等の状況であり、総合入院体制加算の届出がある施設は、ICU等のいずれかを有する傾向が示された。
では、ICU等の届出有無により、診療実績は異なるのであろうか。
グラフ2
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次回配信は7月19日5:00を予定しています
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