【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■差額ベッド代を徴収する病床割合は増加傾向が続く
コロナ禍において、医療機関の感染対策が一層強化されている。入院療養環境は、新型コロナウイルス感染症の陽性患者のみならず、疑い患者についても慎重な対応が必須となっている。特に、疑い患者は検査結果が判明するまで、個室管理にするケースも多い。
すでにさまざまな事務連絡などで、個室対応した場合の診療報酬請求など医療機関側への配慮がなされている。加えて5月には、後方病床への転院後の個室対応についても事務連絡が出た。(CBnews「回復患者の転院、個室対応なら1日300点加算」 参照)
医療機関としては、せめて個室が十分にあれば、柔軟な対応ができる。しかし、個室が十分な医療機関は非常に少ない。個室を増やせば1床当たり床面積が増え、建築費がかさむ。個室を増やし差額ベッド代を徴収することもできるが、徴収できる病床数は全体の5割まで(ただし、国が開設する医療機関は2割以下、地方公共団体が開設する医療機関は3割以下)とされている。
差額ベッド代を徴収しない個室を設置するケースもあるが、徴収する個室との不公平感が生じるなど、対応に苦慮する話もよく聞く。また、差額ベッド代の金額設定によっては、差額を徴収する病室の稼働が低下しがちといった話も聞くだけに、単純に個室を増やせばよいものではないだろう。
中央社会保険医療協議会の「主な選定療養費に係る報告状況」の資料を見ると、「特別の療養環境の提供に係る病床数」は年々増加し、2016年には27万床を超えた。その後、若干減少しているが、医療施設調査による日本全体の病床数に占める割合の推移では、19年が最高値であった=グラフ1=。
グラフ1 特別の療養環境の提供に係る病床数の推移
中医協総会 資料「主な選定療養に係る報告状況」(2008-2020年)、医療施設調査(2005-2019年)を基に作成
※特別の療養環境の提供に係る病床数は、毎年7月1日現在の数。割合に用いた総病床数は報告した医療機関の総病床数ではなく、医療施設調査の全医療機関の数
■増える個室・4人室、減る2人室
さらに、差額ベッド代を徴収する病床数について、部屋タイプ別の推移を見ると、個室(1人室)は着実に増加している=グラフ2=。コロナ禍以前から、患者の個室希望の増加や、ベッドコントロールの柔軟性の高さから、個室を増やす傾向があった。一方で、2人室は減っている。一部屋当たりのベッド数は少なくても、結局は個室でないため、人気がなかったなどの理由と思われる。そのため、2人室を個室に改修するケースなどもあり、2人室が減り、個室が増えていると推測される。
また、4人室も増えている。これは6人室を、仕切りなどを設けて4床に減らすことで、1床当たりの面積を広げてアメニティーの改善を図っているためと思われる。
グラフ2 特別の療養環境の提供に係る病床数(部屋タイプ別)の推移
中医協総会 資料「主な選定療養に係る報告状況」(2008-2020年)を基に作成
差額ベッドの届出を行っている医療機関を対象に、部屋タイプ別の病床数の比率を見た=グラフ3=。現状、4人室が55%で最も多い。主に6人室などの5人室以上が12%あり、4人室以上で見ると病床数全体の3分の2を占めている。個室は19%にすぎない。
(残り1724字 / 全3121字)
次回配信は6月23日5:00を予定しています
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】