【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■医業利益率低下の原因は何か?
医療法人の医業利益率の推移を見た=グラフ1=。利益率の低い一般病院やケアミックス病院は、2010年代後半から1%を割り込む時も出始めた。2000年代後半において相対的に利益率の高かった療養型病院や精神科病院も、利益率は低下傾向にある。直近は療養型病院・精神科病院どちらも2%台前半になっている。
グラフ1 病院種別ごとの医業利益率の推移(医療法人)
厚生労働省 病院経営管理指標を基に作成
これまで安定的な経営状況にあった精神科病院において、なぜ医業利益率の低下が始まったのだろうか。
精神科病院を取り巻く環境変化を見ると、「入院から外来へのシフト」「入院患者の高齢化・疾患構成の変化」が生じた。これが利益率を低下させた要因になったと考えられる。
図1 医業利益率低下を引き起こしている環境変化
精神科病院の病床利用率は低下している=グラフ2=。病床利用率は医業利益率と密接な関係がある。しかし「利用率が低下したから、利益率が低下した!」で終わらせてしまっては意味がない。なぜ利用率が低下したのか、考える必要がある。
グラフ2 精神科病院の病床利用率推移
厚生労働省 病院報告を基に作成
利用率低下の要因は、平均在院日数の短縮が挙げられる=グラフ3=。1980年代半ばには600日前後であった平均在院日数は、直近300日前後と半分になった。在院日数の短縮には、薬物療法の進化などに加え、なるべく自宅に帰す取り組みなどが大きく影響しているものと思われる。
自宅に帰す取り組みを強化した結果は、外来患者延数の増加となって表れている=グラフ4=。精神疾患の患者数自体が減ったわけではなく、入院から外来にシフトしたと考えるべきだろう。
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次回配信は6月9日5:00を予定しています
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