【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■手厚い看護配置への報酬は必要だが、仕組み自体は抜本的な見直しを
4月、日本看護協会が厚生労働省へ提出した要望書には、「手厚い看護配置(5対1など)を行って高度な急性期医療を提供する病棟については加算を新設されたい」とあった(詳細についてはCBnews記事「5対1の高度急性期病棟、加算で評価を」 参照)。
まずもって、全国的に新型コロナウイルス感染症が厳しい状況下において、これまでにない肉体的・心理的負担のかかっている医療従事者への報酬を手厚くすべきである。もちろん、この医療従事者には看護師も含まれる。
要望書の「I-1-2 高度な急性期入院医療を提供する病棟における適切な看護職員配置の評価」には、次のように記されている。
公益社団法人 日本看護協会 令和4年度診療報酬改定に関する要望書より引用
「看護配置が手厚いこと」と「手厚い看護配置の必要性」が完全に等価であるならば、この主張は正しい。しかし、この2つが絶対的に等しいことを示すのは難しい。何らかの理由で看護師の確保が困難ゆえ7対1ぎりぎりで運営しているA病院と、稼働低下などの理由で看護配置が5対1以上になったB病院があったとする。どちらもICU等を有し、「重症度、医療・看護必要度」は同じだったとする。この状況において、A病院とB病院、どちらが手厚い看護配置を必要としているか判断できるだろうか。看護配置は、あくまでも看護配置の必要性を1つの要因とした、複合的な要因から決定されるものである。
さらに、このケースであれば、A病院は加算を算定できず、B病院は加算を算定できることになるかもしれない。看護師の確保が急務なA病院では加算が算定できず、財務的な厳しさから、一層、看護師確保に苦しむかもしれない。
そこで、5対1配置を加算で評価するのではなく、次の3点を提案したい。
高度な急性期入院医療を提供する看護職員への評価・私案
1.(大前提)看護師を含めた医療従事者への評価引き上げ
2.看護師の負担の高い疾患・病期において評価引き上げ
3.看護師の負担の高い病床の高回転化に対する評価引き上げ
■ICU等を有する病院だけに限定する必然性はあるか
要望書において、看護必要度の高い病棟では看護配置がより手厚いことが示された=グラフ1=。
グラフ1 要望書における「重症度、医療・看護必要度Iの基準を満たす患者割合が40%以上の病棟における看護職員配置状況(2019年10月)」
公益社団法人 日本看護協会 令和4年度診療報酬改定に関する要望書より引用
これは、病床機能報告のデータからも同様のことが分かる=グラフ2=。看護必要度の該当患者割合が40%以上の病棟では、40%未満の病棟より手厚い配置となっている比率が高い。
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次回配信は5月26日5:00を予定しています
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