【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 学科長・教授 京極真】
Q クリニックの事務部門と看護部門の仲が悪く、連携がうまくできていません。部署間の信念対立をマネジメントするコツがあれば教えてください。
部署間の連携がうまくいかない理由は信念対立です。各部署の個別の目的に対する上位の共通目的を明確にすることによって、連携を促進していきましょう。
■部署間の連携がうまくできない理由
連携がうまくできない理由は、そこに意見の不一致や価値観の齟齬が生じているからです。例えば、クリニックの経済的利益を優先する事務部門と、患者の利益を優先する看護部門との間で衝突するようなケースが該当します。クリニックなどの組織には複数の部署があり、それぞれ異なる目的、ルール、役割を持っています。つまり、ある部署にとっては「よい」ことが、他の部署にとっては「よくない」という事態に陥ることがあります。それ故、部署間で信念対立が起こって、連携がうまくできなくなるわけです。
部署間の信念対立は、代表者間で生じがちです。先の例で言えば、事務長と看護師長の間で優先する利益の衝突が起こる可能性が高いです。もちろん、その影響は一般の事務員、看護師にも及びます。つまり、事務部門と看護部門間の信念対立は、一般の事務員と看護師間の関係がギクシャクしたり、不信感を招いたり、ストレスを増大させたりします。また、そうした問題は管理職と一般職員の間にも波及します。しかし、部門間の信念対立は典型的には代表者間で体現されやすいものです。
■部署間の信念対立が生じる理由
では、なぜ部署間で信念対立が生じるのでしょうか。この問題にはさまざまな要因が絡みますが、主には区別と相互依存で説明することができます[1]。
区別とは、個人を異なる集団に属していると認識することです。例えば、Aさんは事務部門のメンバーで、Bさんは看護部門のメンバーであると区別するとします。このように、社会的に分類されると、それだけで各人が所属する集団にとって有利に物事を進めることが示唆されています。つまり、自身が所属する集団をえこひいきするわけです。その結果として、集団間の競争が促進されたり、差別を生んだりすることになり、部署間の信念対立が促進されていくわけです。
また、ある部署のアウトプットが、別の部署のインプットになるような業務の相互依存関係が存在する場合、部署間に意見の不一致や価値観の齟齬を引き起こしがちです。例えば、事務部門が経済的利益の増大を求めれば、看護部門がたくさんの業務をこなす必要性が増していくようなケースが該当します。その逆に、看護部門が患者の利益を追求し始めると、事務部門が求める経済的利益の縮小が起こるような場合も同じです。方向性は問われませんが、各部署が担当している課題の相互依存関係は衝突の主な原因になります。
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