一般財団法人日本食生活協会代表理事(元厚生労働省健康局長)・宇都宮啓
新型コロナウイルス感染症が市中に広がりを見せてから1年以上が経ちました。
写真はイメージ
当初は、新型コロナの感染者を受け入れる医療機関の大きな負担や、クラスターの発生による打撃などが問題となりました。しかし、院内感染のリスクを軽減するため、医療機関が不要不急の手術、健診などを控え、患者側も受診を控え始めると、感染者を診療するか否かにかかわらず多くの医療機関の収入が激減し、危機的な状況を迎えました。
医療は公的保険による国民皆保険制度で支えられています。それは裏を返せば、その支払い額などを決める診療報酬制度に縛られているともいえ、中央社会保険医療協議会が行う医療経済実態調査の結果を踏まえて改定される診療報酬によってコントロールされています。このとき、医療は非営利とされていることもあり、病院の利益率は低く抑えられています。つまり、あまり余力のない状態で経営をしている所が多く、今回の新型コロナのような「事件」が生じるとたちまち大きな影響を受けてしまいます。
新型コロナに直接対応しておらず、がん、脳卒中、循環器病などの治療やリハビリテーションを担う医療機関まで影響を受け、必要な医療を提供できなくなれば、まさに「医療崩壊」を招いてしまいます。これに対し、「医療機関を救え」という声が上がり、国がさまざまな施策を講じたのはご存じの通りです。
ただ、国の施策には公平性が求められます。旅行や飲食業界などさまざまな業種が大打撃を受けている中で、医療機関だけに特別な対応をするには、国民や保険者に納得してもらえるような理屈が必要です。たとえホンネは別の所にあっても、役所ではさまざまなタテマエの理屈を考えます。「なるほど」と思うものもあれば、中にはちょっと苦しいものもあるかもしれません。
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