【小濱介護経営事務所 代表 小濱道博】
(1)ICT化の推進
特別養護老人ホームを中心に、見守りセンサーの導入が評価されている。夜勤職員配置加算や夜勤職員の配置基準が、今回の介護報酬改定でより緩和された。しかし、今回も介護ロボットの評価がされていない。このことは、介護ロボットのエビデンスの不足が要因と思われる。コロナ特例で導入された会議でのテレビ電話などICTの活用は、多くの算定要件に導入された。ただし、利用者の居宅において行う会議はテレビ電話等活用の対象外となったため、ケアマネジャーが招集するサービス担当者会議は利用者の居宅で行うことが求められる。今回のICT化で最大のポイントと言えるのは、LIFEデータベースでの記録ソフトの活用だろう。今後は、記録ソフトの普及によって、タブレットを活用した業務の標準化が一気に進むと思われる。
(2)LIFEデータベースによる科学的介護の推進
LIFEへのデータ提出と活用は、多くの加算の算定要件に位置付けられた。それは、LIFEに「データ提供する」ことを評価するものではない。LIFEデータベースから提供されるフィードバックデータを活用して、ケアプランやリハビリテーション計画などを見直して、ケアの質の向上につなげる「PDCAサイクルの活用プロセスを評価する」ものである。今後の実地指導では、その記録等も確認される。LIFEが、機能訓練だけではなく口腔ケア、栄養改善、認知症などへの取り組みも求めていることから、これらへの対応が重要となる。
しかし、LIFEデータベース関連の加算単位は、決して高いものではない。多くの場合、20単位/月から40単位/月程度である。その事務負担や導入コストだけを考えると収支は合わないだろう。しかし、記録ソフトを導入することで、日常業務で蓄積された情報を活用して、データ提出に必要なCSVデータを抽出できるようになる。次に、LIFEから提供されるフィードバックデータを、PDCAのマネジメントサイクルの中で有効に活用することで、ケアの質が向上して利用者満足が向上するのであれば、それは大きな差別化につながる。また、利用者満足が向上することで職員のモチベーションも上がり、職員満足度が向上することで人材の定着率もアップして、人材募集の負担が減る。
なお、記録ソフトを導入するためには、ソフトの購入費用と共にタブレット購入やWi-Fi環境の整備など、設備投資が必要になるが、地域医療介護総合確保基金を活用したICT の導入支援制度を活用できることを申し添えておく。
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