【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 学科長・教授 京極真】
Q ある部署のスタッフ全員がそろって、「管理職を代えてほしい」と訴えてきました。事情を聞くと、「部下に責任を押し付けてくる」「物事を決められず、仕事がなかなか進まない」「ちょっと自分の意に沿わない意見を言うスタッフがいると、後でネチネチと仕返ししてくるから結局言えなくなる」など、不満が噴出しました。スタッフの1人は、「これまで、ずっと我慢し続けてきた」と声を震わせながら憤っていました。そして、皆が口をそろえて、「このままでは長く続けられない」と言うのです。スタッフが総出で抵抗してきたら、どのように対処したらいいですか?
非常に難しいケースです。さまざまな論点を考慮する必要がありますが、まずは抵抗が起こる理由を理解するようにしましょう。その上で、共通の目的を特定して、協力関係を築く基盤を作ってください。また、スタッフを1人の人間として尊重する態度を取りましょう。
■抵抗は難度が高い!
信念対立がエスカレートすると、立場の弱い人たちが不遇な状況を変えるために結束し、力ずくで抵抗することがあります。その理由は、調和的な方法ではないため信念対立がさらに激化することもありますが、うまくいけばゲームの構造が根本から変わって、問題を根こそぎ解消できる可能性があるからです。
例えば、部下に責任を押し付ける上司がいて、部下が団結して職場に苦情を訴えたら、上司の役職が解かれて問題が起こりにくくなる、という変化が生じる可能性があるわけです。スタッフが一致団結して反乱する事態は頻繁に起こるものではないですが、立場の弱い人たちが権力に抵抗するために使える戦略なのです。
しかし、この方法は難度がとても高いです。このような抵抗は、信念対立の争点に熱量を加えますから、関係する人たちのストレスは増大し、コミュニケーションの齟齬が拡大し、不信感や敵対行動を増幅させます。例えば、立場の弱い人たちにとっては、耐え難い状況を変えるために抵抗が妥当と感じるでしょうが、抗議行動が裏目に出てしまった場合、ますます不利な状況に追い込まれることがあります。
他方、立場が強い人たちは、組織を混乱させる行動にテンパってしまって、火に油を注ぐような言動で応酬してしまい、事態をさらに悪化させてしまうことがあるのです。総出による抵抗は、する側、される側の双方にとって、非常に難度が高い行動です。
以上を前提に、このような抵抗をされた側は、どう対処したらいいかを論じていきます。
■抵抗に対する対処のコツ
この問題への対処で考慮すべきポイントは多数ありますが、今回は以下の3つのポイントに焦点化したいと思います。
(1)抵抗が起こる理由を理解する
(2)共通の目的を特定する
(3)尊厳を大切にする
非常に難しいケースであるため、これらを考慮すればそれだけでうまくいくほど単純ではありません。ただ、これら3つのポイントを無視したら、さらに問題がこじれる可能性があると思っています。以下、それぞれ解説します。
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