【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■18年度改定で導入された入院料1と2と、20年度改定
「緩和ケア病棟は赤字だ」と言われてきた。おそらく原価計算をしたら、今でも採算割れしている所が少なくないのではないだろうか。2012年度診療報酬改定より前は、今以上に深刻だった。12年度改定は、「入院30日以内、31日から60日以内の患者」の点数が大幅に引き上げられたことにより経営的にかなり改善したという点で、大きな改定であった=表1=。61日以降は引き下げられたものの、当時、試算した病院で減収する施設はなかったと記憶している。
表1 緩和ケア病棟入院料 12年度改定前後の比較
もちろん、当時も1年を超えるような入院患者がいるケースや、病棟単位ではなく患者単位で見れば減収となるケースはあった。しかし、限られた医療資源である緩和ケア病棟を多くの患者に使ってもらうことの意義や、病棟単位では減収を回避できたことから、改定を前向きに捉えた施設がほとんどであったと思う。
さらに18年度改定では、「直近1年の入院日数の平均が30日未満」などの要件を満たすか否かで、入院料1と2に分かれた=表2=。
表2 緩和ケア病棟入院料 12年度改定から18年度改定までの変遷
入院料1と2の点数差を、「大きくない」と受け取るか、「大きい」と受け取るかは施設によるかもしれないが、多くの施設が厳しい収益性の下で運営していることを考えるならば、おそらく「大きい」が多勢ではないだろうか。その結果、入院日数の平均30日未満を維持するために、「患者の意向を無視して退院させよう」「早く亡くなってほしい」などのような、現場では絶対に考えない方向への努力を強いたと言わざるを得ない改定になってしまった。
次の20年度改定で、この30日未満の要件は削除されたが、一方で、緩和ケア診療加算、外来緩和ケア管理料、在宅がん医療総合診療料のいずれかを届出していることが要件となった。これは、緩和ケアの提供の場は、緩和ケア病棟のみならず、「緩和ケア病棟以外」(緩和ケア診療加算)や、「外来」(外来緩和ケア管理料)、「在宅」(在宅がん医療総合診療料)で一体的に提供されることで、さまざまな患者のニーズに応えられるという方向を示した、非常に意義のある改定だったと思う。
■20年度改定で入院料1の必須要件となった3項目は届出が加速
改定前に比べ、改定後は、緩和ケア診療加算、外来緩和ケア管理料、在宅がん医療総合診療料、いずれの項目も届出している施設の割合が大幅にアップした=グラフ1=。
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