【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2020年度第1四半期は、新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言が初めて発令された時期であり、不要不急の外出自粛が叫ばれた影響からも、日本病院会等による経営調査では患者数が20%程度減少し、病院の財務状況は著しく悪化した(連載第131回参照)。現在は11の都府県に対して2度目の緊急事態宣言中だが、重症患者が増加しており通常の医療提供に支障を来す状況に陥りつつある。もちろん、この状況に対して国は多額の支援をしてくれており、コロナバブルに踊る医療機関もあるといううわさだ。ただ、財源が限られる中、いつまでも支援が続くわけではないだろうから、医療機関はこのような状況下でも患者数獲得に向けての取り組みを継続する必要がある。
コロナ禍での患者の受療行動の変化については、「CBnewsマネジメント」で渡辺優氏が連載113回ですでに取り上げており、コロナで遠方からの患者獲得が難しくなっており、特に広域から患者を集める高度急性期病院に影響があることを指摘されている。筋が通った適切な指摘であるが、個別病院のデータであり、サンプル数が限られ一般化できるのか検証が必要だと感じた。そして遠方の患者が減少したというが、遠方患者が病院全体のどのくらいを占めているかは記述がなかった。仮にその割合が低いのであれば、業績に対する影響も寡少といえるだろう。また、入院患者の来院エリアを最小で2キロ圏内、最大で10キロ超としているが、高度急性期病院にとって10キロは診療圏が狭いと考えた。
そこで本稿では、6つの大学病院と6つのDPC特定病院群における一般病院のデータを用いて、患者移動状況の実態を把握し、高度急性期病院における今後の地域連携の在り方を探っていく。なお、データは19年4月-6月と20年4月-6月の8万9,330人の退院患者を対象にしており、12病院の平均病床数は649である。診療圏として同一市区町村内、二次医療圏内(同一市区町村内を除く)、二次医療圏外(同一都道府県内)、都道府県外という4つのくくりで分析を行った。
表1は、12病院の退院患者数の増減を見たもので、全体では19%の減少となり、全国の急性期病院の減少とほぼ同程度といえるだろう。参考までに、予定・緊急別、手術有無別の患者増減も掲載している。患者数の減少は、地域や病院機能、診療科構成、コロナ患者受け入れの有無、病院の取り組みなどによって変わってくるところだ(連載第138回参照)。
表1
※各病院から収集したデータを基に作成(以下同様)
表2は、病院別に退院患者の居住地を見たものであり、二次医療圏外患者(都道府県内・県外患者)の割合はコロナ禍の20年の方がわずか1ポイントであるが増加している。高度医療を必要とする患者の境界をまたいだ受療が、コロナ禍でも一定程度行われたことになる。なお、本分析に当たっては、同一市区町村内患者をまずは抽出し(1)、それを除く二次医療圏内患者を(2)、二次医療圏以外の都道府県内患者を(3)、都道府県外患者を(4)としている=図=。
表2
図
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次回配信は2月15日5:00を予定しています
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