【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■急性期病院における患者確保は最重要課題に
新型コロナウイルス感染症の影響で、ステイホームや患者の受診控えなどの行動変化が生じ、病院経営に大きなマイナスのインパクトが生じていると前回述べた。直近の感染拡大の状況などを見ていると、数カ月でコロナ禍前の状態に病院経営が戻るとは、到底考えられない。そこで、患者の行動変化などから、戦略を見直す余地について考えてみる。
緊急事態宣言下の4月、5月は、多くの急性期病院で大幅な患者減に直面した。病院団体の調査結果においても、尋常ではない利益率の低下として表れている=グラフ1=。緊急事態宣言が解除された5月下旬以降もなかなか患者の戻らない病院もあったが、多くの病院では徐々に患者が戻り始めた。
グラフ1 3病院団体の病院経営状況調査による医業利益率の差の推移
3病院団体 新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況調査(2020年7月分、2020年度第2四半期)を基に作成
しかし依然として、ほとんどの病院では病床利用率が低い水準のままで、前年同月を上回るようなことはほぼなかった。そのため、患者確保の強化など、何らかの取り組みが不可欠と考えた所が多い。そのような課題感から、幾つかの病院におけるデータ分析を通じ、大都市部特有の課題が見えてきた。
■大都市部の高度急性期病院で起きた「広域からの患者確保」
大都市部(Y県Z市、県庁所在地)にあるA病院の4-6月の入院実患者数を見た=グラフ2=。最も患者数の落ち込んだ5月は64.4%と、実に35%以上の減少となった。
グラフ2 A病院の入院実患者数増減(対前年同月比)
独自分析資料
さらに入院患者の来院エリアを市内、市外(県内)、県外の3つに分け=図1=、それぞれの入院実患者数の対前年同月比の推移を見た=グラフ3=。
図1 A病院の来院患者エリア模式図
グラフ3 来院患者エリア別 入院実患者数増減(対前年同月比)
独自分析資料
どのエリアも、対前年同月比では大幅な減少に変わりない。しかし、
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次回配信は12月23日5:00を予定しています
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