【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■看護師全体で見られるような離職率の地域性は、新卒看護師には見られない
前回「有効な看護師離職対策はデータから示唆される(上)」は、看護師の離職率についてデータで見られる特性を述べた。大都市部ほど転職先の選択肢は多いため、看護師全体の離職率が高くなる地域性を示した。その一方で、新卒採用者の離職率では、そのような地域性が見られないことも示した=グラフ1=。今回は、新卒採用者に着目し、看護師の確保対策と離職対策について考える。
グラフ1 都道府県別 病院看護職員 新卒採用者離職率と病院就業看護師数の関係
日本看護協会 病院看護実態調査(2019年)、衛生行政報告例(2018年度)を基に作成
■看護師養成学校を卒業したばかりの「看護師のたまご」はどこに行くのか
厚生労働省の「看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」を基に、各都道府県の養成学校(大学などを含む)を卒業後、「看護師として就業した人数」を分母に、そのうち「県外で就業した人数」を分子にして、県外への流出率を算定した=グラフ2=。
都道府県で比較すると、香川や青森は半数近くが県外に流出している。一方、北海道は9割が道内に残っている。もちろん、流出率に含まれる看護師には、養成学校入学時点で出身地を離れ、就業を機に出身地に戻る看護師も一定数いると思われる。また、養成看護師数と募集看護師数のミスマッチがある可能性も否定できない。しかし、流出率にここまで大きな開きがあることは事実である。また、その流出率の高い県には、看護師確保に強い危機感を抱いている所もある。そのため、この状況を放置しておくわけにはいかないだろう。
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