【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
新型コロナウイルス感染症により、2020年度4月の病院業績は医業利益率ベースで前年度比13.9ポイント減、5月は同17.4ポイント減と大幅に悪化した。その後、6月は同7.5ポイント減、7月は同5.8ポイント減と推移し、最悪を脱した感はあるものの、いまだ業績悪化に苦しむ病院が多い=グラフ1=。また、今後、感染が急拡大するやも知れず、先の見えないウイルスとの戦いに病院経営者を悩ませる日々が続いている。
グラフ1
業績悪化の理由はコロナによる患者数減少である。グラフ2は4月から7月の診療実績について、日本病院会等のデータから前年度との増減率を見たものであり、5月の患者数が最も少なく、その後、改善傾向にあることが分かる。ただ、7月単月の増減率を見ても、いまだ前年度の水準には至っておらず、厳しい状況は続いている。本連載でも言及してきたように、患者数減少によって、入院・外来共に診療単価は上昇した病院が多いはずだが、患者数減の勢いに単価増が追い付かない状況にある。
グラフ2
コロナはやがて収束するだろうし、かつての社会生活に戻れば患者の受療行動も回復するはずだという楽観的な見方もある。確かに、感染症との戦いに人類はどこかで打ち克つはずだし、元に戻らなくとも一定のパイは戻ってくることだろう。加えて、将来推計入院患者数を見れば、高齢化が進むことでしばらくは増加傾向が続くはずなのだから、コロナで患者数が減少しても「どこかで一定の入院患者獲得ができるかもしれない」という淡い期待を抱く経営層もおられるようだ。
もちろん、悲観的になり過ぎる必要はないし、どんなに未来を憂いても現状は何も変わることがない。しかし、病院経営を担う者には組織を存続させ、そして地域医療を支える責任があり、現実は現実として受け止める必要がある。
本稿では、地域医療構想等で過剰とされてきた急性期医療について、いま一度その現実をデータに基づき確認し、将来に備え我々がなすべきことに言及する。
資料は、地域医療構想と病床機能報告のギャップを簡潔にまとめたものだ。25年の地域医療構想で想定されている必要病床数について、高度急性期・急性期が過剰な一方で、回復期は不足することが示されている。地域によって事情は異なるが、この現実から我々は目を背けることはできない。
その後、19年9月に再編統合を検討するよう424病院のリストが挙げられ、再編統合は20年秋口であるちょうど今頃が期限だったわけだが、コロナによって実質延期されることになった。今、不可欠な感染症病床は公立病院が有しているケースが多く、その存在価値をコロナ禍で改めて認めることになったものの、だからといって再編統合の必要がないという議論にはならないだろう。そもそも世の中の急性期病床数は過剰であるというのが、私の理解だ。
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