【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 学科長・教授 京極真】
Q 医院に設置している意見箱に、患者から「スタッフ間の言動が首尾一貫していない」「人によって言うことが変わるから困っている」「不信感を持つので、しっかり教育を行ってほしい」という投書がありました。具体的なスタッフ名は書いていませんでしたが、私自身も前から気になるところはあったので、これを機会に注意喚起したいと考えていますが、具体的にどう対応したらいいでしょうか。
状況と目的の共有を促してください。できれば、行動変容を促す教育の機会もつくりましょう。
■首尾一貫性のなさは信念対立のトリガーになる!
結論を言うと、スタッフ間の言動が首尾一貫しないという状態は、信念対立の引き金になり得ます。患者の立場に立てば、スタッフ間の言動がその時々で変わると、「チームワークができていないのではないか」と疑心暗鬼になり、誰を当てにしていいのか分からなくなります。医療は患者の生命・生活を扱うところですから、人によって言うことが異なるのは不安をあおります。
実際、私たちの研究でも、スタッフ間の言動に首尾一貫性のないことが信念対立を引き起こしていることが示唆されました(1)。この研究では、回復期リハビリテーション病院に入院中の患者を対象に質的研究を実施し、スタッフによる介入の説明や教え方の違いから不信感が生まれ、それが信念対立を招く原因となることが認められました。スタッフ間の首尾一貫性のなさは、患者との関係に信念対立をもたらすのです。
もちろん、医療はチームワークで実施するものですし、それはさまざまな考え方・やり方の相互作用によって成り立ちますから、スタッフ間で言動が異なることは起こり得るものです。つまり、スタッフ間で言動が首尾一貫しない状態は、現代医療において常に起こり得ることです。よいチームほど多様性を許容しますから、異なる意見が顕在化する可能性が増すかもしれません。
しかしそのことと、スタッフ間の言動が首尾一貫しない状態が問題になることは、矛盾しません。幾つかの条件を満たせば、異なる意見があっても不信感をあおらず、むしろ新たな気付きや質の改善につながることもあるからです。
それはいったい、どのような条件なのでしょうか。
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