【4U Lifecare(フォー・ユー・ライフケア)株式会社 代表取締役社長 CEO 伊藤久美】
■「なでしこナース」のスタート
「なでしこナース」は、71万人ともいわれる潜在看護師の皆さんが、常勤をベースとしたこれまでの働き方ではない、短期やスポットで現場への復帰を目指していただくために、「ITだけ」でマッチングする新しいサービスです。これまでの類似サービスはWebサイトを活用しながらも、医療・介護機関、看護師それぞれに必ず担当の営業が付き、その人的コストをカバーするために手数料が高いことが多く、また短期やスポットの案件ではその手数料が低くなってしまうため、マッチングの精度があまりよくないことが課題となっていました。
なでしこナースのアイデアは、短期、スポットの案件は比較的担当する業務が限定されるため、必要とされているスキルと看護師の持つスキルをITできちんと突き合わせれば、「営業スタッフを介さなくても低い手数料で正しいマッチングができるのでは」という視点から生まれました。
※なでしこナース イメージイラスト(4U Lifecare提供)
現在、関東の1都3県、および現地のコーディネーターが常駐している福井県でサービスを展開し、数百人の現役看護師、潜在看護師が登録し、1万件以上の案件の登録があります。新型コロナウイルス感染症で世界中が大きな影響を受けている中、看護師からの応募は比較的増えています。看護師が必要とされている職業であることを、改めて認識された方もいらっしゃるのではないかと思っております。
■ベンチャー企業に飛び込む
「医療従事者が生き生きと働くことができなければ、正しい医療を届けることができないんです」
それまで働いていた外資系企業を退職し、「少し忙し過ぎたからしばらくのんびりしよう」と考えていた私の気持ちを動かし、新しいビジネスに足を踏み入れたきっかけは、祐ホームクリニック理事長の武藤真祐先生のこの言葉でした。
これまで働いてきた企業で感じていた、社員自身が仕事にやりがいを感じ、仕事を通して幸せになれるという気持ちを持つことの重要さと難しさ。医療の質にも大きな影響を与える、企業と同じ問題意識。それは私が初めて気付いた、大げさに言えばこれからの日本にとって、重要な視点であるように思えたのです。
その言葉に引き寄せられるように、セールスフォース・ドットコム社の社長、会長を歴任されたIT企業経営のプロである宇陀栄次さんと、医療とアントレプレナーを推進し続ける武藤真祐先生が2人で立ち上げた、医療ITのスタートアップである4U Lifecare株式会社の経営に参画し、その後2018年に看護師と医療・介護機関をマッチングさせる「なでしこナース」のサービスをスタートさせたのでした。
共同創業者・宇陀栄次氏(左)、共同創業者・武藤真祐氏
■アフターコロナ時代に必要な、これからの取り組み
サービスをスタートさせてから、「潜在看護師の復帰は何が大きなハードルになっているのか」「何を解決していくことが重要なのか」を考え続けています。それは、アフターコロナという、これまでとは全く違う働き方を前提とした時代で、何が必要とされるか、という点に行き着きます。
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