【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
教育係が中心となって行う実務指導は、OJTが中心となる。これは、具体的な仕事を通じて仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを意図的・計画的・継続的に指導する教育手法だ。それには人によって教え方に違いがあってはならず、「根拠のある指導」が行われなければならない。
■実務指導ではOJTツールの活用を
仕事の手順は、どのような目的や意味があるのかを言葉で示すことも必要とされる。そのために、OJTツールとして介護マニュアルが必須になるが、多くの事業所ではそのマニュアルがあってもOJTで活用していないのが現状だ。その理由は、書かれている内容が雑多で統一性がなく、分かりづらいという欠点があり、実用的なマニュアルになっていないからだ。
そこで私は、介護プロフェッショナルキャリア段位制度の「基本介護技術の評価」を参考にした介護マニュアルを作成し、OJTツールとして活用することを推奨している。それを利用して、食事介助のOJTツールを具体的に作るとすれば、以下のように「食事前の準備」「食事介助」「口腔ケア」の3項目に分けられる。
【食事前の準備】
・声を掛けたり肩をたたいたりするなどして、利用者の覚醒状態を確認する
・嚥下障害のある利用者の食事にとろみをつけたかどうかを確認する
・禁忌食の確認をする
・飲み込むことができる食べ物の形態かどうかを確認する
・食べやすい座位の位置や体幹の傾きはないかなど、座位の安定を確認する
・顎が引けている状態で食事が取れるようにしたかを確認する
【食事介助】
・食事介助の際には、必ずいすに座って利用者と同じ目線の高さで介助し、しっかり咀嚼して飲み込んだことを確認してから次の食事を口に運ぶ
・食事の献立や中身を利用者に説明するなど、食欲が湧くように声掛けを行う
・利用者の食べたいものを聞きながら介助する
・自力での摂食を促し、必要な時に介助を行う
・食事の量や水分量の記録を行う
【口腔ケア】
・できる利用者には、義歯の着脱、自分で磨ける部分のブラッシング、その後のうがいを促す
・義歯の着脱の際、利用者に着脱を理解してもらい、口を大きく開けて口腔内を傷つけないよう配慮しながら無理なく行う
・スポンジブラシやガーゼなどを用いた清拭について、速やかに行い、利用者に不快感を与えないように注意する
・歯磨きや清拭の後は口腔内を確認し、磨き残しや歯茎の腫れ、出血などがないかを確認する
以上のように、「基本介護技術の評価」のチェック項目の文言を少し修正するだけで、介助項目ごとに指導すべき内容が明確になる。当然、教育係をはじめとした全職員が、このマニュアルに沿ったケアを実践できなければならないわけだから、介護サービスの質もチェック項目のレベルで担保できることになる。
■言語化された方法で根拠のある指導を
「不足感が増す介護人材をどう確保するか・上」(2020年8月27日)
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