【横浜市立大大学院データサイエンス研究科 准教授 黒木淳】
これまで院内データの分析・活用に向けたテーマで執筆してきたが、今回でシリーズの最終回を迎える。前回までは、院内データを財務情報と非財務情報に分け、それぞれのデータの収集、分析、そして活用方法について述べてきた。細かな内容についてはそれぞれの回を見ていただきたいが、簡単に要約すると次の通りである。
第1に、経営管理者の最初の役割はデータの収集にあり、横断的に部署をまたぐデータについて収集していく必要がある。第2に、データ分析には何らかの目的が必要であるため、何のためにデータを活用するのか、院内での問題意識の共有が大切である。その場合、業績を管理する目的で活用されることが多い。第3に、財務情報・非財務情報いずれの場合も、データの信頼性がどの程度あるのかについて留意することが必要となる。第4に、データ分析では比率をうまく使うとよい。最後に、財務情報・非財務情報は、将来的な戦略計画や投資の意思決定まで視野に入れながら活用すると、効果的である。
一方で、この間、想定外に新型コロナウイルス感染症が多大な影響を社会にもたらしたことから、病院経営の今後の在り方について筆者自身も考える機会となった。新型コロナウイルス感染症発生を通じて、明らかに人々の行動パターンが変化しており、非連続的な社会変化の中で、学問自体も変化が必要だと痛感した。
この2カ月余り、新型コロナウイルス感染症による社会構造の変化を調査するために、クラスターが生じた幾つかの病院から経営相談を受けてきた。今回は、それらの病院に伺い議論したことから、大事だと思った普遍的な対策について、A病院を例にお伝えしたい。ただし、筆者は感染症が専門ではないため、経営面以外についての認識が十分ではない点については、注意してほしい。
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