【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
前稿では、落ち込んだ病院業績を回復させるために、稼働率が下がった今だからこそ、病棟再編を思い切って行うことを提案した。しかし、東京都の新規感染者数が過去最多を更新する状況になり、これを含む近県の入院患者数が増加してきており、病棟再編どころか新型コロナウイルス感染症への対応に再び頭を悩ませるようになっている。
そこで、本稿はより現実的に、そして短期的に実現可能な看護補助者の配置を手厚く行い、働き方改革への対応をも同時に達成する取り組みを紹介する。
グラフ1は有効求人倍率の推移を見たもので、2018年には1.6倍程度まで上昇し、1973年のオイルショック時並みの水準に達していた。つまり、人手不足のため、求人を出したところで病院に働き手が集まる状況ではなかった。
グラフ1
(※)厚生労働省資料を基に作成
ところが、新型コロナウイルス感染症によって需給が一転し、ここ数カ月で有効求人倍率が大幅に下落した。今後、1.0を下回る可能性は十分にある。有効求人倍率が1.0を下回るということは、簡単に言えば、働きたくても働く場所がないことを意味している。このような時にこそ、病院が地域の雇用を支える場となり得る。診療報酬改定でも、急性期看護補助体制加算等の引き上げが前回に引き続き、20年度改定でも行われたことは、記憶に新しい=図1=。
図1
(※)厚生労働省資料より
もちろん、すでに最上位の加算を届け出ている病院も多く、これ以上の過剰配置をしても「人件費の持ち出しになるだけ」というケースも存在する。しかし、そのような病院であっても雇用が冷え込んでいる今だからこそ、積極的な採用を行い、働き方改革に向けた対応を行うという選択肢がある。その取り組みが、次回の診療報酬改定で評価されるかもしれない。
本稿では、特に高い報酬が設定されている「夜間100対1急性期看護補助体制加算」等の届出を実現するための施策について、具体的な事例を交えて検討していく。
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次回配信は8月3日5:00を予定しています
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