【公益社団法人認知症の人と家族の会 本部副代表理事・埼玉県支部代表 花俣ふみ代】
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する中、私たちの暮らしにさまざまな影響が及んでいます。
介護を必要とする人や、介護する家族にとって、この厳しい状況がいつまで続くのか? 先行きへの不安は計り知れません「家族の会」(*1)の電話相談でも、「もし自分(在宅介護者)が感染してしまったら…。一体、誰が認知症の妻の介護をしてくれるのか?」「妻が感染者として隔離されるようなことになったら、どこで看てくれるのか?」といった声や、介護者の仕事がなくなり収入が減ってしまったため、介護保険のサービス利用を控え、「私がちょっと目を離した隙に、母はいつも通りデイサービスに行こうと出掛けてしまった。そして、道に迷い転倒してけがを負い大騒ぎになってしまい、これからどうすればいいのか困っている」などの切羽詰まった相談が寄せられています。こんな時こそ、認知症の本人や介護者にとって頼れるのは、介護保険制度の通所介護や訪問介護等のサービスです。
*1:1980年結成。本部は京都。全国47都道府県に支部があり1万1,000人の会員が「認知症になっても安心して暮らせる社会」を目指して活動。認知症本人や家族だけでなく、医療・介護の専門職の方や市民も広く参加し、各支部では、「つどい」「会報」「電話相談」の3本柱の活動を進めるとともに、認知症への理解を広める啓発活動や行政への要望や提言も行っている
■介護保険制度創設から20年を経て
介護保険制度において国はこれまで、高齢者人口の急増により増え続ける給付費に“制度の持続可能性のため”と、在宅介護の継続に不可欠ともいうべき、デイサービス(通所介護)とホームヘルプ・サービス(訪問介護、とりわけ生活援助)をターゲットに、削減を推し進めてきました。
振り返れば2000年4月にスタートした時点では、介護の社会化を目指し、介護が必要になったとしても住み慣れた地域で安心して暮らしていくことができるように支える介護保険制度の創設が、メインテーマであったはずです。それが20年を経て、大きく変貌し続けています。05年には「予防重視システムへの転換」として要介護認定は「要支援1・2」の区分が増え、「予防給付」と「介護給付」に分けられました。その後も、「地域包括ケアシステムの構築、その深化・推進」「自立支援・重度化防止」が掲げられ、制度の持続可能性の確保として、利用者負担増や介護報酬の見直しなどの複雑で分かりづらい改正、改定が繰り返されています。
結果的に利用する側にとっては、思うようなサービスが使えない、費用が増えたということでしか捉えられないのが現実です。
■「生活援助は自立支援につながらない」という衝撃
予防事業等の取り組みは、「元気なうちに予防に努めれば、介護を必要とせず、介護保険を使わずに逝けますよ」と言わんばかりではないでしょうか? 病気や障害により介護が必要な状態になるのを誰も望むはずもなく、要介護状態になったとしても少しでも良くしたい、これ以上悪くなりたくないと願うのは当然でしょう。
16年の社会保障審議会・介護保険部会での議論で、「だらだらと何年も使い続ける生活援助は、自立支援につながらない」という批判が出たことには驚きました。生活援助を利用し続けるだけで状態を維持し在宅生活を継続しているなら、それは立派な自立支援・重度化防止です。さらに、翌年の財政制度等審議会財政制度分科会において「月100回を超える生活援助中心型」の訪問介護利用が批判されました。
(残り2414字 / 全3921字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】