【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 学科長・教授 京極真】
Q 1人1人の職員はよく頑張っているのですが、チームはバラバラでそれぞれの力を生かしきれていません。通常業務に加えて新型コロナウイルスへの対応も重なっているため、管理職への「報・連・相」を徹底するよう指導し、チームの意思統一を図ろうとしました。すると、確かに報連相はできるようになったのですが、それぞれの職員がバラバラに動いている状態は改善しませんでした。これ以上、報連相を徹底しても仕事が増えるだけになる懸念もあって、管理職としてどう対応したらよいか悩んでいます。
職場の連携を促進したいなら、部下に報連相を求めるだけでなく、管理職も部下に報連相をするべきです。チームがバラバラになる背景には情報格差があるため、管理職が部下に報連相することによってそれを埋めるといいです。
■バラバラになる背景には情報格差がある
職員がバラバラに動いて、チームの力を生かせない背景の一つに「情報格差」があります。つまり、管理職と一般職(医療スタッフ、医療事務など)の間でそれぞれが持っている情報の質・量に差があるため、足並みがそろっていない可能性があるのです。例えば、管理職はさまざまな部署の情報を十分持っているが故に、A、B、Cの選択肢のうちAが最も妥当だと判断するとします。しかし、一般職は自身の部署の情報しか持っていないため、A、B、Cの選択肢のうちCを、同様に確からしい解として選ぶかもしれません。情報の質・量に差があると、足並みがそろわないのです。
もちろん、情報格差は一般職間でも起こります。例えば、看護師Xは、A、B、Cの選択肢のうちBを選ぶかもしれませんが、看護師Yは、それらのうちCを選択するかもしれません。同様のことは、看護師と医療事務、医師と看護師と薬剤師などの組み合わせでも普通に起こります。管理職と一般職だけでなく、一般職間で判断の根拠になる情報の質・量に差があると、どうしても導き出す答えが違ってしまい、結果としてバラバラになるということが起こり得るのです。
こういう構造が背景にあると、管理職が部下に報連相を求めても、チームの力を生かすことはできません。理由は、それによって情報格差という問題を解消することはできないからです。むしろ、管理職と一般職の間で情報格差が広がるばかりなので、ますます職員の動きがバラバラになっていく恐れすらあります。上記のQを考えるには、このような構造を把握した上で対策を立てていく必要があります。
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