【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■DPC点数引き継ぐ制度の曖昧さは、戦術の立てづらさに
2020年度改定により、DPC病棟に入院している患者が地域包括ケア病棟に転棟する場合、入院期間IIまではDPC点数を引き継ぐことになる。課題とされていた一物二価を解消するためには適切な見直しであり、また、期間IIIまでとしなかったことで、経営的なインパクトはある程度抑えられている。
以前、本連載の「地ケア転棟、期間IIまでDPC点数継続の影響をどう見るか」で述べた通り、この見直しで、DPC病棟がより急性期機能に特化することを求めている。そして、地域包括ケア病棟は急性期を脱した患者や、地域からのさまざまな病態の患者の受け皿としての充実が求められている。
この記事が掲載される4月1日からは、患者の医療の質にプラスになり、かつ、経営的なマイナスを抑える最適な転棟タイミングを模索していかなければならない。「最適な転棟タイミング」という現実的な課題を前に、機能分化の理想論の話はあまり役立たない。
そこで、最適な転棟タイミングを考える上で気にするべき「曖昧なポイント」を挙げる。
<地ケアに移った患者は計算から外れるのか>
1.重症度、医療・看護必要度
2.平均在院日数
3.効率性係数
4.診療密度
<地ケアに移った患者の診療報酬の請求はどうなるのか>
5.医療機関別係数
6.疾患別リハビリテーション
これらのポイントが明確にならないと、ベッドコントロールなどの戦術を立てることは困難である。4月1日時点で不明な点が残るのは、今回の改定に限った話ではない。しかし、「曖昧なポイント」を把握し、適切な指示をしておかなければ、現場は少なからず混乱するだろう。
■看護必要度アップに地ケア転棟は有効か
急性期病棟から地域包括ケア病棟へ転棟させることは、直接的な診療報酬点数の維持・向上を期待するだけでなく、さまざまな効果を期待していた。看護必要度を満たさなくなった患者を地ケアに転棟させれば、急性期病棟の看護必要度はアップする。診療報酬上の要件クリアのため、地域包括ケア病棟を活用することは院内の機能分化につながる。急性期病棟の入院料の施設基準厳格化を乗り越えるため、院内・地域内で機能分化を進めることは、今後も重要だろう。
20年度改定で、看護必要度は救急・手術患者の評価が大幅に上がった一方、認知症患者などの評価が下がった。結果、病院によっては、看護必要度のハードルクリアがかなり厳しくなるだろう。ハードルをクリアするためには、今まで以上に地域包括ケア病棟の活用を考える病院もあるはずだ。
ただし、DPC病棟から地ケア病棟に転棟した患者の評価は、どうなるか分からない。DPC点数を算定する期間IIまでは、急性期一般入院基本料の病床には入院していないが、点数は算定している状態である。
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次回配信は4月15日5:00を予定しています
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