【一般社団法人リエゾン地域福祉研究所 代表理事 丸山法子】
新型コロナウイルスの影響が広がり続け、先の見通しが立たない中で、介護従事者は不安や負担との戦いです。施設長はじめスタッフ総出で、利用者の安全確保やリスク回避に取り組み、健全な経営を目指して日々奮闘されている姿に頭が下がります。こうした一大事に、リーダーは何を語り、どう動くのか? スタッフや利用者、ご家族や地域住民、関係機関など多くの人々が、施設長の一挙一動を施設長ご自身が思う以上に、じっと見て聞いています。
例えばこの1カ月、あちらこちらで見聞きした施設長の言動をまとめると、次のようなパターンがありました。
(1)「まずは利用者の安全を」「まずは笑顔で」など、「まずは○○」といった優先順位の提示
(2)「私に聞かれても」「誰かなんとかしてくれよ」という愚痴や感情吐露
(3)「いつもありがとう」「お疲れさま、みんなのおかげだよ」というねぎらいや感謝
(4)「大体、行政の対応がおかしい」「国はどうして○○しないのか」「マスクはどこへいったんだ」といった批判や評論
ついには、(5)「ピンチはチャンス」「今、私は試されている」という自己啓発系のスローガンをつぶやくなど、それぞれいとおしいほどのお人柄がうかがえます。
このような危機的状況にこそ、人の本音が表れるものです。
例えば、就学児童を持つスタッフや、「37度の発熱で風邪症状なので休みたい」という朝の欠勤連絡などに、どのように対応していますか? 利用者を取るか、スタッフを取るかの究極の判断で、スタッフに犠牲を求め続けてはいないでしょうか。スタッフがトイレットペーパーを持ち帰り、さらにはフリマ出品するなどモラルに反する行動を見聞きした時、どのように注意をしていますか。注意する一方で、在庫が底を突きそうなマスクやグローブの大量発注の指示など、非常識な判断をしていませんか。
施設長がどんな指示や判断をするのかを見て、「施設長は結局…」とスタッフに思わせてしまうことも少なくないようです。まして、普段から施設長は「地域に貢献できる介護事業所になる」と懐の深さを豪語しているのに、これじゃあまるで正反対。小さいなあ、がっかりした、とも聞きました。
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