【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 教授 京極真】
Q 看護師長と事務長の意見が激しく対立し、看護師長が退職することになりました。事務長が、「スタッフが私の指示を聞かない!」と激怒したことが対立のきっかけです。事務長は私(医院長)の親族で、よくやってくれていると思っていたのですが、今回の件で以前からスタッフとの間で確執があったと知りました。看護師長は長い間、病院を支えてきたため、多くのスタッフが「これからどうなるのだろうか…」と強く不安を感じているようです。スタッフの不安感を軽減し、退職の連鎖を止めるにはどうしたらいいでしょうか。
非常に厄介な問題です。簡単にはいきませんが、基本的には、「目的をしっかり共有する」「コミュニケーションを密にする」「透明性を担保する」といった対策に取り組みましょう。
■不信感を払拭しつつ信頼関係を育む
事務長に期待される役割は、医院長が仕事に専念できるよう支援することであり、具体的には、医院の人事、労務、財務、マネジメント、マーケティングなどが含まれます。医院内でトラブルが発生すると、医院長が自身の業務に専念し難くなるため、そうしたことを起こりにくくすることも事務長の役割であると言えます。
従って、今回のようなケースで看護師長と事務長の間で激しく意見が対立し、看護師長が退職せざるを得ないところまで追い込まれるのは、この期待される役割から逸脱していると言えるでしょう。しかも、以前からスタッフとの間に確執があるわけですから、スタッフは不信感からくる不安感を持っていると想像できるでしょう。その結果、退職者が出ることも考えられます。
スタッフの不安感を払拭したいならば、事務長の役割を達成できていないことに対する不信感への配慮が必要です。不信感が背景にある状態のまま、「安心して働いてもらいたい」というメッセージを送っても、その通りには受け取ってもらえないからです。安心して働いてもらうために、不信感があることを前提にした信頼関係を育む必要があるのです。
■不信感を払拭しながら信頼関係を育むコツ
このようなケースで、信頼関係を育むコツは以下の通りです。
・その1:目的をしっかり共有する
・その2:コミュニケーションを密にする
・その3:透明性を担保する
以下、それぞれ解説します。
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