【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■働き方改革の波は静かにやって来ている
2019年4月(中小企業は20年4月)から、時間外労働の上限規制が適用された。医師には24年4月から適用される。まだ4年以上あると考えるか、あと4年しかないと考えるかは、環境や立場により変わるだろう。しかし、「医師の働き方改革に関する検討会」では、24年4月まで「各医療機関は自らの状況を適切に分析し、労働時間短縮に計画的に取り組むことが必要」と方針を示していることから、医療機関が何もせず24年4月を迎えることは考えにくい。すでに、出退勤時間の記録や36協定の見直しなどの取り組みをしている医療機関もあるだろう。このような取り組みが必須であることは言うまでもない。しかし、それに加え、働き方改革による病院経営に対する中長期的なインパクトを想定することも重要と思われる。
とはいえ、病院に対する働き方改革の大波がまだやって来ていないこのタイミングで、そのインパクトを想定することは難しい。そこでDPC公開データの分析結果から、働き方改革のインパクトを予見させる事例を紹介する。
■全麻手術件数における環境変化、中小病院での件数減少と大病院での件数増加
DPC算定病院を対象に、「全身麻酔ありの入院患者数」の変化を見た=グラフ1=。300床以上の病院は14年度から16年度で患者数を増やしている。200床台の病院はほぼ変化なし。200床未満は減少で、特に99床以下は大幅な減少である。
グラフ1 全身麻酔ありの入院患者数変化(14年度対16年度)
厚生労働省 DPC公開データ(14年度、16年度実績)を基に作成。16年度DPC算定病院で、かつ14年度以降に統合していない病院のみを対象
看護必要度の厳格化や、DPC/PDPS制度の階段状の点数、機能評価係数IIの効率性係数など診療報酬制度の変化に応じ、病床規模に関係なく急性期病院が高回転化を促されている。しかし、高回転化を進め新入院患者の確保がままならなければ、利用率は低下し、一般的には経営が厳しくなる。新入院患者確保が重要なことは自明のことであるが、全身麻酔患者においては、大病院ほど患者数を増やしやすく、中小病院には患者確保が厳しいという現実が透けて見える。
(残り2515字 / 全3466字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】