【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
連載第111回では地域包括ケア病棟がDPC/PDPSの点数を引き継いだ場合の選択肢について取り上げた。DPC/PDPSの点数を引き継ぐということは、現状の地域包括ケア入院医療管理料と同様に、診断群分類に定められた期間についてはその点数であることを前提とした内容にした※。つまり、入院期間IIIまでDPC/PDPSの点数であり、その後から地域包括ケア病棟入院料を算定するということだ。
ところが、2019年12月6日の中央社会保険医療協議会(中医協)の議論では「DPC/PDPSの平均在院日数である入院期間IIまでとしてはどうか」という議論が行われ、ほぼ了承された。私は何かの間違いではないか、そんなことがあってよいものかとその時は感じた。
地域包括ケア入院医療管理料の点数に合わせるのだとすれば、入院期間IIIまでが前提になる。もちろん転棟させれば、効率性係数でプラスの評価にはなるなどのメリットは残るだろう。診療報酬の決着は政治的な要素もあり反対派との折衷案を取ったのだろうが、これで本当にDPC/PDPSの点数を引き継ぐといえるのだろうか。とはいえ、診療報酬を決めるのは中医協であるわけだから、外野から何を言っても仕方ない。
今回は、入院期間IIあるいはIIIにおける手術料を除く入院診療単価と地域包括ケア病棟入院料と比較したデータを提示し、今後の当該病棟の在り方について言及する。
※【編注】診断群分類点数表に従って診療報酬を算定していた患者が同一保険医療機関内の地域包括ケア入院医療管理料を算定する病室に転棟・転床した場合については、診断群分類点数表に定められた入院日IIIまでの間は、診断群分類点数表に従って診療報酬を算定するとされている。
グラフ1-3および表3は、各入院期間における診療単価を計算している(手術料を除く)。つまり、DPC/PDPSの包括点数に加え、疾患別リハビリテーション料など出来高算定が可能な項目を抽出している。手術料は、DPC/PDPSでも地域包括ケア病棟でもいずれも出来高算定が可能になっているため除外した。
データは特定機能病院である大学病院本院群、DPC特定病院群、かつ地域医療支援病院で総合入院体制加算を届け出る高度急性期病院であり、医療機関別係数の平均は1.45程度と高い所を対象とした。入院診療単価にすると、7万-9万円程度の水準になる。
地域包括ケア病棟を有する、あるいは届け出を検討する医療機関だと、係数はこれより低い所が多いと思うが、高単価病院でも、地域包括ケア病棟に移す方がうま味があるのだとすれば、その報酬の妥当性を議論できるかと考え、あえてこのような抽出を行った。
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次回配信は2020年1月13日5:00を予定しています
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