ナショナルデータベース(NDB)や介護保険総合データベース(介護DB)などに蓄積された膨大なデータを連結解析する試みが、政府の「データヘルス改革」の一環で2020年度から始まる見通しです。それによって外来から入院、退院後をまたぐデータの分析が進み、新たな発見につながる可能性があります。サービスの質向上への期待が膨らみますが、医療や介護の現場は変革を迫られるかもしれません。医療・介護のビッグデータは何をもたらすのでしょうか。【兼松昭夫】
※この記事は「メディカルマスターズ」とのタイアップ企画によるものです。
■医療153億件分、介護9.2億件分のレセ情報
データヘルス改革をめぐっては、厚生労働省の「データヘルス改革推進本部」が17年1月、「健康・医療・介護ICT」を20年度に本格稼働させるという工程表を公表し、大枠の検討に着手しました。同省は当初、医療や介護のビッグデータ活用のほか、「保健医療記録共有サービス」や「PHR(パーソナルヘルスレコード)・健康スコアリング」など8つのサービスを20年度から提供するとしていましたが、19年9月にはその先の21年度以降をにらんだ新たな工程表を公表しました。
保健医療記録共有サービスでは、患者が過去に受けた診療や健診などの情報を全国の医療機関が共有できる仕組みをつくり、不要な検査や無駄な投薬の解消などを狙います。またPHRでは、これまでに受けた特定健診や服薬などに関する情報を患者自身が確認し、健康管理に役立てられるようにします。
これに対してビッグデータの活用は、NDBや介護DBなどに蓄積された匿名データを連結して解析する試みです。健康だった人がいつ病気になり、その後はどのような医療や介護サービスを受けてきたのかを、国民一人一人に割り当てる識別子を使って連結(名寄せ)し、生涯にわたってたどれるようにしようというのです。そのための関連法が19年5月に成立しました。
NDBには医療レセプト約153億件と特定健診約2.6億件分、介護DBには介護レセプト約9.2億件と要介護認定約0.5億件分という膨大な匿名データが蓄積されています(いずれも17年度末現在)。政府は、それらを行政や医療保険者、研究者だけでなく民間企業などにも条件付きで提供し、活用を促します。
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