【横浜市立大附属病院集中治療部 部長 准教授 高木俊介】
2019年3月にCBnewsに掲載された記事において、「Tele-ICUに関する調査研究」での論点整理、今後の事業化の必要性、普及に向けた保険点数化の必要性について、総論的に述べた。本掲載では、Tele-ICUの構築に向けた具体的な課題や今後の展望を公開することで、多くの自治体や病院がTele-ICU導入に前向きになることを期待したい。
■Tele-ICU構築におけるコミュニティー形成の重要性
横浜市立大は19年度事業として、厚生労働省、横浜市、横浜市立大、横浜市立大附属2病院の予算を用いて、横浜市立脳卒中・神経脊髄センターを加えた3病院がネットワークで連携する「日本版Tele-ICU」を構築する計画を進めている。厚労省の補助金は「医療施設等設備整備費」という名目で、事業費総額の半額を補助するというものである。
複数の医療機器と医療施設が連携するTele-ICUのシステム構築と運用には莫大な費用が掛かるため、取り組もうとする自治体や病院グループがそれほど多くはないことは容易に想像がつくだろう。しかし、急性期医療の需給バランスが崩れようとしている日本において、タスクシェア・タスクシフトにつながる施策としてTele-ICUは注目されている。また、データ利活用という観点からも魅力的な事業である。
何としてでもTele-ICU構築に取り組みたかった私は、事業の必要性と将来性について、学会、横浜市立大、横浜市立大附属病院、横浜市の中のTele-ICU事業に関係すると思われる各部署で、繰り返しプレゼンテーションを続けてきた。その執念のかいがあり、総事業費の半額の予算を関係各所の合算で用意してもらうことができた。この時の感動は今でも忘れないし、予算化されたことに対して強い覚悟を持たなければならないとも感じた。
こうした産学官連携の事業を進める上で、コミュニティーの形成は非常に重要である。ステークホルダーが多数いる医療情報連携系の事業では、Win-Winの関係性、モチベーションの維持、事業の継続性のための計画を構築することが欠かせない。医師、看護師、事務、自治体、企業とそれぞれの立場により、Tele-ICUに対する考え方はさまざまであり、立場が変わると言葉や方向性も異なるため、整合性をつけるのは非常に難しいと感じた。
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次回配信は9月19日5:00の予定です
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