【株式会社ジャパンコンサルタント アンド メディカルサービス代表取締役 森清光】
9月は防災月間です。ここ数年、異常気象の影響により各地で災害が発生しています。今週は、首都圏を大型台風が直撃し、交通機関の混乱や停電が相次ぎました。先週も九州北部で記録的な大雨となり、佐賀では病院と併設する高齢者施設が川の氾濫で孤立してしまい、入院患者などが避難できず3日間孤立しました。大雨から一夜明けて、自衛隊により医薬品や食料などがボートで運び込まれ、何とか最悪の事態が避けられたとの報道がありました。
近年では、東日本大震災が、薬品や食料の備蓄、施設管理に関して大きな問題があることを教えてくれました。当時、医薬品や医療資材などさまざまな医療品が病院で不足しましたが、交通遮断によりメーカーなどからの供給が途絶え、治療に大きな影響が出ました。
地下に電気系統やシステム系統、カルテなどを管理していた病院は、津波により電力の喪失や患者データの破損などが発生し、その後の病院設計では、各種基幹設備を病院上層階に置いたと聞きます。
佐賀の例は、人口の少ない地域での限局的な災害でしたが、人口が多い大都市圏や広範囲に広がる地震、大雨、洪水、火山噴火などの災害では、支援の手が大幅に遅れる可能性を予想して、対策しておくことが必要となります。
災害が発生した場合には、地域の中核病院など人命救済に直結する医療施設が避難場所になる事例が見られます。高齢社会が進めば進むほど、急性期の重症患者のみではなく、慢性期病棟が多い病院や老人保健施設も地域の医療の支え手として、災害への対応が期待されています。しかし残念ながら、職員の災害時の対応についてなど十分な準備がされていないのが現状です。
私は、2年前に都内病院で開催された大規模災害を想定した訓練に、病院の事務側の代表として参加しました。その際、病院代表側として参加された方々が、現状分析や指示出しなどを普段の訓練通りには行えなくなる場面がありました。この訓練では、病院内での災害状況の把握やスタッフへの避難指示タイミングが非常に難しく、これまでの訓練経験が発揮できなかったのです。
これらの経験から、災害対策の考え方を見直す必要性を感じたため、災害対策のプロフェッショナルである、東京都立広尾病院の減災対策支援室副室長の中島康先生(日本DMATインストラクター・国際緊急援助隊救助チーム技術検討員)に、「なぜ病院は災害時の対応が不十分なのか?」について話を伺いました。
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