【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■再編・統合すべき病院名の公表は、地域医療構想の「原点回帰への材料」
厚生労働省は、再編・統合の検討の必要性が高い公立・公的病院を今秋にも公表する予定だ。この取り組みについてはCBnewsでも2019年4月の記事で紹介されている。
参照:公立・公的病院再編統合の判断目安、厚労省が提示
直近の関心事として、本格化してきた20年度診療報酬改定の議論は当然大事だが、この公立・公的病院名の公表は、非常に注目されているように思う。
全国を回っていると、「自院が対象にならないか」「もし対象となった場合、具体的にどのような取り組みをしたらよいか」と不安に感じている地域・病院が少なくない。厚労省では、病院名の公表自体に意味があるのではなく、地域の実情に合う最適な医療資源の配分を実現するという、地域医療構想の「原点に立ち返る材料の提供」と位置付けているという。
ただし、単に「地域医療構想調整会議」などでの活発な議論を促すことを期待しているだけではなく、再編・統合の必要性が特に高い公立・公的病院がある区域などを「重点支援区域」に設定し、国が直接支援する方針のようだ。
さまざまなデータ分析結果を基に、これまで全国各地で再編・統合の議論を支援してきた立場からすると、この議論は非常に時間がかかると感じる。さらには、総論賛成・各論反対の反応を示す病院関係者や行政関係者が多く、一筋縄ではいかない。それだけに、「重点支援区域」に対し、どのような支援が想定されているか興味深い。
■厳しい経営環境にある中小規模の公立病院
「地方公営企業年鑑」を基に、公立病院の病床規模と医業収支比率の関係を見た=グラフ1=。病床規模に関わらず、いずれも100%を下回る赤字状態であること自体も問題だが、病床規模と医業収支比率には一定の関係性が見られる。一般病床300床未満では、医業収支比率が85%に満たず低い。一方、400床以上では90%程度と相対的に高い。
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次回配信は9月18日5:00の予定です
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