【医療法人社団鳳優会理事長 藤元流八郎】
■「医師の生命」を案じていただける時代に安堵
私が理事長を務める鳳優会(東京都品川区)は、1999年に城南ホームケアクリニックを開設して訪問診療をスタートし、現在は都内で3つのクリニック運営を行っている。
今回、訪問診療所の働き方改革について書かせていただくが、医師の働き方改革案の詳細については、さまざまなメディアで語られているので割愛する。要は、「2024年度から医師の時間外労働を年に960時間までに制限しますよ。地域医療確保のために必要な医療機関として、救急センターや専門的に代替困難な機関、訪問診療などは条件付きで1860時間まで認めますよ。各機関はしっかり業務改善してくださいね」ということである。
仮に18時までが定時として、22時まで残業すると1日4時間の時間外労働になる。ウイークデーの診療を月20日で計算すると、連日残業した場合4時間×20日で月80時間。これが12カ月で960時間となる。なかなか難しい残業時間設定ではあるが、脳・心臓疾患の労災認定基準となる「過労死ライン」の数字が年間960時間とのことなので、わが国の医療が医師の献身的な努力で支えられてきたこと、そしてやっと「医師の生命」を案じていただける時代になりつつあるのかと安堵を覚える。
ただし、その改革を自助努力で達成せよ、というのは困難を伴う。各医療機関もこれまで、少しでも医師の負担が軽減するようにと努めてきたはずであるから、さらなる改革を行うのならば、何らかのテコ入れが必要だからである。
■訪問診療の働き方改革は実現可能性が高い
一見、最も改革困難に見える24時間365日対応の訪問診療については、実は市中病院などよりも実現可能性が高い。その理由は、現在、診療報酬において在宅医療が高く評価されていることにある。
例を挙げると、機能強化型の在宅療養支援診療所の場合、1カ月2回以上の定期診療を行い、24時間365日体制で患者対応を行うと、「在宅時医学総合管理料」4100点の診療報酬が算定される。1回当たり訪問診療料833点なので、月2回定期診療を行うと、4100点+833点×2回→5766点/月となる。当会の場合はさらに、「在宅緩和ケア充実診療所加算」400点を算定しているので、重症患者の場合などは、6166点/月となる。
当会では約20年前に訪問診療を始めたが、当初、訪問診療所の経営者は大きく2通りの考え方を基に動いていた。
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