【株式会社ジャパンコンサルタント アンド メディカルサービス代表取締役 森清光】
最近、ある医療施設の運営状況を病院管理職からヒアリングしました。
2019年の関東地方は、7月に入っても気温が上がらず、気象庁の発表では冷夏になるとの予報でした。しかし、7月後半の梅雨明けから一転、猛暑となり、急な寒暖差に体が慣れていないせいで体調を崩す患者が外来に殺到し、入院患者も増加して満床に近い状態とのことでした。
一方、この時期は家庭を持つ職員を中心に夏休みのための長期休暇者も多く、人手不足からシフト管理に苦慮する事態も発生しているとのことでした。
追い打ちを掛けるように、台風10号などの自然災害の影響で、四国、関西、中国地方の医療機関が外来を数日間休診するなど、運営・経営に大きな影響を与えています。
さて、今月は私が医療機関の一番の弱点と考える人材を中心にした管理不足について書かせていただきます。これまで数回にわたり、人材については書いていますが、その後、社会の風が大きく動きだしています。
19年7月31日に中央最低賃金審議会より「令和元年度地域別最低賃金額改定の目安について」が答申され、19年10月改正の東京都の最低賃金は1000円を超え、1013円となることが適切としています。人件費が高騰しており、業種によっては最低賃金をさらに上回る賃金上昇となっているでしょう。企業の中間決算報告でも、人件費の割合が増加したため、売り上げが上昇しても人件費を吸収しきれず、収益は下がっている事例が見受けられます。
■人件費の増加と人材確保の問題
ここ10年の間に、公的医療機関が運営する病院は譲渡・売却され、または大手病院チェーンに運営を委託されていますが、その大きな原因は、慢性的な赤字経営と医師などの人材確保が困難なことが挙げられます。従来の大学病院医局派遣に頼りきっていた病院は、医師引き揚げの通知が届き、委託費を引き上げるか、自力で医師を見つけるかを迫られていた話もよく耳にします。
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