東京都社会福祉協議会はこのほど、「福祉人材の確保・育成・定着に関する調査結果報告書」を公表した。
報告書では、社会福祉法人の経営課題として、「人材派遣・紹介会社の実態」「外国人雇用」「処遇改善加算」などを調査しているが、慢性的な人材不足が原因で、人の確保・育成・定着まで一体的に取り組めていない状況が見えてくる。
さらに「処遇改善加算」で職員の給与を増やせる一方、対象職種が限定されているため、職種間で給与のバランスが崩れているなどの指摘もある。【大戸豊】
東京都社会福祉協議会「福祉人材の確保・育成・定着に関する調査結果報告書」
調査対象は、同協議会の社会福祉法人経営者協議会会員のうち、都内に法人本部がある822社会福祉法人。調査期間は2018年10月16日-11月9日で、有効回答は313件だった。313法人の内訳は、介護のみ経営94法人、障害のみ経営44法人、保育のみ経営90法人、その他20法人、複数事業を経営60法人、無回答5法人となっている。
■人材派遣・紹介の「コストが高い」
派遣・紹介会社を利用しているのは313法人のうち178法人(56.9%)。分野別に割合を見ると、介護のみ経営が77法人(81.9%)と最多で、これに複数事業経営39法人(65.0%)、障害のみ経営14法人(31.8%)と続く。
利用する理由(複数回答、N=178)は「(直接採用をかけ)募集をしても応募がない」が155法人(87.1%)と最多で、「即戦力となる職員が確保できる」64法人(36.0%)、「緊急性に対応できる」53法人(29.8%)、「雇用の調整弁として活用している」49法人(27.5%)などが目立った。
17年度に法人が支払った派遣費用は、高齢者分野が平均で2029万円、最高額は1億5300万円。紹介料については、高齢者分野が平均495万円、最高額は5600万円で、アンケートでもコストの高さが多く指摘されている。
一方で、派遣・紹介会社を「利用しない」理由(複数回答)については、「直接雇用に比べてコストが高い」が81法人(65.3%)と最多だった。次に「採用で人材の確保ができている」57法人(46.0%)。「法人が目指す理念や方針を共有しにくい」は31法人(25.0%)、「短期間で退職する」と「責任が重い仕事を任せられない」は共に13法人(10.5%)だった。
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