不足が顕著な産科、小児科、救急医療、へき地医療等の医師の早急な確保について、より実効性のある対策を国の責任において講じる―。東京都がこのほど公表した、国の施策や予算に対する「提案要求」では、全国的に医師不足が続く中、都内でも「特定の診療科や地域で医師の確保が困難な状況である」と指摘し、医師確保対策を充実させることを要望。医療従事者の勤務環境の改善も促しており、年間時間外労働時間が1860時間を超える医師が在籍する医療機関に対して「速やかに国が重点的な支援を行うこと」としている。【新井哉】
■「医師確保に柔軟に取り組むことができない」
「提案要求」では、医師確保対策の現状と課題を取り上げている。例えば、医師偏在指標に基づき設定される「医師多数・少数三次医療圏」については、「指標は医師の総量的な偏在状況を相対的に示しているものに過ぎず、地域の実情を十分に表すものとなっていない」と指摘。また、「医師多数とされた都道府県においては専攻医の定員が制限されようとするなど、医師確保に柔軟に取り組むことができない」といった見解を示している。
専攻医の都市部への集中を防ぐため、2020年度から新たな算定方法によるシーリングの導入が検討されていることに関しては、都市部の専攻医の定員が過度に制限された場合、「地域の医療提供体制に大きな影響を与えることにもつながりかねず、また、専攻医が希望する質の高い研修の機会が奪われるおそれがあり、制度本来の目的と乖離した仕組みとなってしまう」と懸念。症例が豊富で研修の体制も整った都市部の病院の機能を評価し、研修の質が損なわれることがないよう十分考慮する必要性を挙げている。
医師臨床研修制度についても、募集定員倍率が25年度までに1.05倍となるよう段階的に圧縮するとされていることに触れ、「これ以上の圧縮は、研修医の選択の過度の制約となるとともに、臨床研修病院間の競争が行われず研修の質が担保出来なくなることにつながるおそれがある」としている。
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