【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2019年度の機能評価係数IIの内訳が医療機関別に公表された(2019年6月19日開催、入院医療等の調査・評価分科会)。連載では全国のDPC対象病院の中で、2番目に機能評価係数IIが上昇した飯山赤十字病院の取り組みを紹介した(98回)。そこでは、効率性係数、複雑性係数、救急医療係数が影響し、地域包括ケア病棟の設置など病棟再編成が鍵を握ることに言及した。
今回は、19年度の機能評価係数IIについて、医療機関群別に差がついた項目を整理し、上昇した病院はどの項目で評価されたのか、さらにその理由も考えた。
表1では、医療機関群別に機能評価係数IIの各項目と6項目合計の相関係数を見た。18年度と19年度では、ほぼ同じ傾向が見られる。機能評価係数IIは重み付けは行われておらず、均等配分となっているが、差がつきやすい項目ほど、相関係数が高くなっている。相関係数が0.4以上の項目はオレンジ色にしたが、19年度は診療報酬改定もなく、評価方法にも変更がなかったので、違いが生じないのは当然の結果である。
表1 機能評価係数II各項目と機能評価係数II合計の相関係数
大学病院本院群では複雑性係数と地域医療係数の相関係数が高く、結果としてこれらで差がついた。グラフ1では、大学病院本院群の複雑性係数を見たが、病院間で大きなばらつきがある。一方で、グラフ2は大学病院本院群のカバー率係数を見た。皆が一定の病床数と診療科ラインナップを有しているからなのか、複雑性係数ほどの差異は生じていない。複雑性係数が高い病院は、地域との役割分担が進んでいることが予想され、低い病院では短期手術などの割合が多く、これらは室料差額も徴収しやすい傾向があることなども関係しているのかもしれない。医療機関群の実績要件で補正複雑性指数※があるが、そのハードルが極めて低いことは、このような事情が関係しているのだろう。
※全DPC対象病院データの平均在院日数より長い平均在院日数を持つDPCで、かつ、1日当たり包括範囲出来高実績点数が平均値より高いDPCを抽出。これらのDPCについて複雑性指数を算出する
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次回配信は7月8日5:00を予定しています
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