地域の人口減少や拡大する赤字に対し、入院収益などを伸ばして財務状況の健全化を図ろうと、経営改善計画を策定する公立病院が相次いでいる。2017年度に一般会計から経営計画策定までのつなぎ資金として27億円の借り入れを行った市立札幌病院(札幌市中央区、一般626床、精神38床、感染症8床)は17日、中期経営計画を公表し、他院や在宅からの急性期患者の搬送能力を向上させるため、病院救急車の配備を検討することを明らかにした。山形県病院事業局も県立河北病院(河北町、一般120床、地域包括ケア40床、緩和ケア20床、感染症6床)の外来のみの診療科について「見直す方向で検討」する方針だ。【新井哉】
■「優先的に取り組むべき課題は収益確保」
14年度以降、経常収支の不足が続いており、財務体質の改善は喫緊の課題―。市立札幌病院は、19年度から24年度までの経営改善の指針となる計画を策定した。札幌医療圏は20年ごろをピークに徐々に人口が減少し、45年には約213万1000人と、ピークと比べて10%以上人口が減ると推計されているが、高齢化に伴い医療需要が増大し、特に救急医療に対するニーズが中等症を中心に増加すると考えられている。こうした状況などを踏まえ、計画には、救急医療や災害医療、周産期医療など求められている医療を今後も安定して提供し続けていくため、医療の質を高めるとともに財政基盤を強化する必要があることを明記した。
同病院の給与費、材料費、委託費、経費のいずれも漸増傾向にあるが、中でも給与費が約半分と高い割合を占めている。医業収益と給与費の比率(対医業収益比率)を見ると、同病院は58%であり、「他の黒字の公的病院(約53%)と比較すると高い状況」としている。
給与単価、患者当たりの職員数、医業収益に分けて他の公的病院と比較すると、給与単価と患者当たりの職員数は同程度であるのに対し、同病院の医業収益は低く「大きな差」があるという。このため、「優先的に取り組むべき課題は収益確保である」との見解を示している。
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