【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
戦後初となった10連休(4月27日から5月6日まで)も、大きな混乱もなく終えた医療機関が多いだろう。「医療機関が10日間も休みだと、救急患者がたらい回しになるのではないか」といった危惧もあったし、病院側からはこの時期だけ、オーバーベッドを認めてほしいという要望もあった。ただ、私はこの点は当初から問題がないと考えており、結果としておおむねその通りになったのではないか。
救急患者については、毎年のゴールデンウイークもお正月も輪番で臨む地域が多く、各地の救命救急センターなどの拠点病院がしっかりとした体制を敷くので、10連休になったからといって、それほどの影響はないはずだ。また、オーバーベッドを認めてほしいという声があったのには驚きで、連休中は多くの急性期病院では空床が目立ち、ガラガラになるものなので、病院経営者の立場からは心配だったわけだ。
連載でも手術待ちの患者の手術をさらに先延ばしにしないよう、そして急性期病院における稼働率を維持するためにも一般外来を開けるのではなく、手術室等の侵襲的治療を行う部門を中心に、連休中も稼働させるのが望ましいと主張してきた。そのことが新入院患者数の獲得につながる。
■10連休中の対応、予定手術が明暗分けた
私がアドバイザーとして関わっている多くの病院では、4月30日、5月2日、5月6日に開院したケースが多く、緊急手術等の対応以外、10日間完全に休んだ所はまれだ。病院機能によるが、急性期病院では予定入院と緊急入院がそれぞれ半分程度で、予定入院患者の6-7割が手術対象になるため、10日も休むと予定の新入院患者が入らない。このため、病床稼働率が著しく落ち込むことになるし、手術がなければ病院収入は激減する。普段は9割くらい稼働率がある病院でも、5割程度まで下落したかもしれない。
ただし、開院したけれど、思ったよりも患者が集まらず、結局、やる意味があったのかといった声を聞くのも事実である。
今回は、武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市)の事例を基に、どのような対応が正解なのかを振り返り、今後の大型連休をどう考えていくかについて検討していく。
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