【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 教授 京極真】
Q 4月から新卒スタッフとして働き始めて1カ月が経過しました。学生時代は「チーム医療が大切である」「患者と医療者の信頼関係を構築する」などと習いました。けれど、実態はかなり違っていて、チーム医療は意見の対立でうまく機能せず、不信感が満ちあふれています。また、医療者は忙し過ぎて、患者へのケアの質よりも効率性を重視しており、信頼関係の構築なんて全然できていません。理想と現実のギャップがひどいので辞めたくなってきました。どうしたらいいですか。
辞める前に、理想と現実のギャップをすり合わせるべきです。具体的には視点を変えて、理想と現実のつながりに気付けるようにしてください。また、この問題は誰でも体験するからこそ、職場としても対策を準備するとよいです。
■リアリティ・ショック
理想と現実のギャップで生じる衝撃は「リアリティ・ショック」と呼びます。理想と現実を巡る信念対立と捉えられます。これは特に、新人の医療者が体験しやすい問題ですが、ベテランの医療者でも、昇進・出産・復職・転職などの環境の変化によって生じる恐れがあります。新人医療者の離職率は他に比べて高く、その背景にはリアリティ・ショックがあると考えられています。
リアリティ・ショックは、自身が思い描いていたイメージが、現実の臨床と懸け離れているときに生じる衝撃です。上記の例で言えば、「チーム医療が大切である」と習い覚えてきたのに、現実にはチーム医療でむしろ不信感が募るばかりで、理想と現実がさくっと割れていることが分かります。こういう事態に遭遇すると、リアリティ・ショックに陥るわけです。
すると、理想と現実の隔たりに衝撃を受けるだけでなく、さまざまなストレス反応を引き起こします。例えば、チーム医療で意見の対立が生じ、不信感を持つことによって、怒りや不安を体験しがちです。それがひどくなると、燃え尽きたような状態になって、出勤時に吐き気、抑うつなどが生じ、離職せざるを得なくなるわけです。
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