【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
厚生労働省が介護の現場に課すペーパーワークの半減に向けた取り組みを進めている。事務作業にかかる時間と労力を少なくし、介護職員の負担軽減やモチベーションのアップ、人手不足の解消につなげるのが狙いというが、介護事業所の「現場感覚」とは懸け離れたものだろう。「介護の現場」という言葉が、厚労省と介護事業所では、同じ場所を指しているのかとさえ思えるほど、意識に乖離がある。この差が解消されない限り、介護職員の負担軽減などできるはずがない。
文書量半減の取り組み クリックで拡大
2019年1月18日全国厚生労働関係部局長会議「老健局重点事項説明資料」より
■削減対象は、介護事業所の事務書類にすぎない
厚労省が削減対象としたのは、事業所の指定申請や施設の設立認可の際に出さなければならない書類に含まれる、以下の6項目だ。
1 申請者又は開設者の定款、寄附行為等
2 事業所の管理者の経歴
3 役員の氏名、生年月日及び住所
4 当該申請に係る事業に係る資産の状況
5 当該申請に係る事業に係る各介護サービス事業費の請求に関する事項
6 介護支援専門員の氏名及びその登録番号
2018年6月29日付「『介護保険法施行規則等の一部を改正する省令』の公布等について」より
これらの書類は、われわれが言う「介護の現場書類」ではない。全く的外れである。
介護事業所に長く勤めてきた立場から言えば、「介護の現場」とは、利用者に直接かかわる場所のことであり、現場職員とは看護・介護職員や相談援助職等を指すもので、事務職員を指すものではない。
削減対象の書類や項目は、介護事業所の事務書類にしかすぎない。こんなものがいくら削減されても、「介護職員の負担の軽減やモチベーションのアップ、人手不足の解消」などにはつながらない。
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次回配信は5月29日5:00の予定です
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