【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
国の方針として、診療報酬の支払いは、原則として外来は出来高払い、入院は包括払いであることが既に示されている。外来は検査や画像診断など、実施した行為に基づき算定する仕組みである一方、入院は急性期入院医療に対する包括払いのDPC/PDPSだけでなく、地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、療養病棟入院基本料、緩和ケア病棟入院料など、多くの入院医療が包括払いの対象となっている。包括払いという環境下では、検査や画像診断を実施してもしなくても「まるめ」になる仕組みであり、だからこそ効率的な医療提供を心掛けようと努力することになる。特にDPC/PDPSでは、入院期間が長くなると1日当たりの包括点数が逓減するため、在院日数短縮のインセンティブが仕掛けられている。
グラフは、DPC対象病院を医療機関群別に分け、平均在院日数の推移を見たものだ。いずれの医療機関群でも平均在院日数が短くなる傾向が見られ、特にII群(現在のDPC特定病院群)は平均在院日数が短い。これはII群病院を評価する実績要件に診療密度が含まれており、より濃厚な治療を行う病院がここに分類されていることが関係しているのだろう。一方で出来高払いのDPC準備病院でも、平均在院日数が短縮傾向にある。これは手術等の低侵襲化が進んでいることに加えて、重症の急性期患者の受け入れを各病院が増やそうとしている結果だろう。とはいえ、同じ支払い方式である出来高病院では平均在院日数は横ばいだ。これはデータ提出が課されたことなどにより、年度により参加病院が異なっていることが関係しているとみられる。
つまり、わが国の多くの急性期病院は平均在院日数を短縮させており、効率的な医療提供体制に近づきつつあると考えられる。ただし、7対1あるいは10対1の看護師配置を行う急性期でありながらもDPC/PDPSに参加しない病院がある=表1=。今回はその実態に迫り、今後の急性期入院医療の在り方について言及する。
グラフ 医療機関群別等平均在院日数の推移 クリックで拡大
「2017年度DPC導入の影響評価に係る調査『退院患者調査』の結果報告について」を基に作成
表1 支払い方式等と入院基本料の関係
「2017年度DPC導入の影響評価に係る調査『退院患者調査』の結果報告について」を基に作成
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