【福島県立医科大学附属病院 病院経営課 副課長 中村孝】
ビジネスの世界では、売上高や利益が経営に関する重要な指標になりますが、病院経営でも、それは変わりません。しかし、医療の質が伴っていなければ、病院の利益は上がらなくなってきています。病院の内部環境と外部環境を見据えつつ、どのような対策が立てられるのか。福島県立医科大学附属病院 病院経営課の中村孝さんに、制度の経緯や現場での経験を踏まえつつ、病院の目標の立て方について紹介してもらいます。
病院経営では、人口減少、年齢構成の変化とそれに伴う疾病構造の変化、医師をはじめとした働き方改革の推進などが、今後より大きな問題になるでしょう。
自院のあるべき姿を明確にしつつ、人的資源や病床がどれだけ必要になるのか、今後を予想しながら管理することが求められています。それは私が勤務する大学病院・特定機能病院※1でも同様です。
※1 特定機能病院 高度の医療の提供、高度の医療技術の開発および高度の医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院(特定機能病院一覧)
■常に先を見る事務力を付ける教育を
DPC制度(DPC/PDPS※2)は2003年にまず大学病院・特定機能病院に導入されました。この制度がスタートする以前は、とにかく病床を埋め、投薬・注射・検査をたくさん実施していれば、収入は上がり、利益も出る状況でした。そのような経営を私は「昭和の病院経営」と呼んでいます。
さらに、翌04年には民間病院にも適用されました。私が以前勤めていた民間病院も早くから準備を進め、04年から参入しました。
この制度を境に、民間病院は、医療の標準化(入院期間IIまでの退院率※3)や新規入院患者の獲得を主とした経営にシフトしていきました。DPC/PDPSは包括報酬が特徴ですが、このルールの下では、病床をとにかく埋め、投薬・注射・検査を多くし、入院期間を延ばすといった「昭和の病院経営」では、収入は抑えられてしまい、利益が出なくなってしまいます。
病床が埋まらない場合、事務職によっては「空かせるよりは在院日数を延ばそう」と提案する人もいますが、最終的には、機能評価係数IIの効率性係数などに影響し、翌年には痛い思いをすることになります。目先の現金収入ではなく、常に先を見る事務力を付ける教育が重要です。
※2 「DPC」という呼称には、診断群分類に基づく1日当たり定額報酬算定制度と、患者分類としての診断群分類の意味が混在している。本来 DPC(Diagnosis Procedure Combination)は診断群分類を意味する略称であり、支払制度の意味は含まれない。このため、支払制度としてのDPC制度の略称を DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System)と書き分けることがある。
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