【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
医療費が抑制される環境において、在院日数を短縮し、長期入院を適正化することには重要な意義がある。実際、在院日数は「重症度、医療・看護必要度」、DPC/PDPSにおける効率性係数、医療機関群の実績要件である診療密度などにも影響を及ぼす。治療が終了すれば速やかに退院させることが、濃厚な医療資源を投入する急性期病床として適切だし、医療政策でも評価される。
データからも、医療機関がこの方向性に沿って行動していることが確認できる。表は、全国の一般病床全体における入院患者数等の状況で、2005年には19.8日だった平均在院日数は短縮され、一度たりとも延びたことはない。これはDPC/PDPSが浸透した影響もあるだろうし、手術等の低侵襲化の影響もあったはずだ。今後もこの傾向は続くと考えられ、急性期病床では高回転の運営が求められる。
表 全国の一般病床全体における入院患者数等の状況
その一方で、人口10万人当たりの新入院患者数は増加傾向にあり、05年に28.6人だったのが、16年では32.8人となった。ただし、病床利用率は05年の79.4%からじわじわと下落して14年には75%を下回ったものの、その後若干回復している。これは新入院患者数が増加したことが影響している。
今後人口減少や高齢化による医療ニーズの変化などで、一部の都市部を除き、多くの地域で入院患者の減少が予想され、地域医療構想では急性期病床は過剰とされている。もちろん、地域によって事情は異なるだろうし、一律に論じるのは危険だ。ただ、地域医療構想では、現状の在院日数や疾患構成を前提としているため、実際にはさらに入院患者が減っていくのではないか。
入院患者が減少する中、平均在院日数の短縮が迫られれば、多くの病院で空床が生まれ、やがて病床のダウンサイジングが現実味を帯びてくる。
もちろん、平均在院日数を短縮すれば、入院診療単価は向上する傾向にあるのも事実だ。グラフ1は、病院ごとに平均在院日数と入院診療単価の関係を見たもので、在院日数が短い病院ほど、入院診療単価は上昇する傾向にある。方程式のX(横軸)が平均在院日数で、1日短縮すると入院診療単価は一般的に約4000円増加することになる。この点は既に連載でも指摘してきた。しかし、在院日数を短縮しても、思いのほか入院診療単価が上がらないという実感が強く、さらなる検証が必要であると考えた。
グラフ1 7対1入院基本料を算定する病院の平均在院日数と入院診療単価 クリックで拡大
今回は、内科系と外科系に分け、それぞれの在院日数と入院診療単価の関係を分析する。ただし、入院診療単価の向上は病院にとって、必ずしも経済性につながるわけではなく、むしろ赤字の原因ともなりかねない。そうはいっても、地域医療構想でいう「高度急性期」や「急性期」の機能は、医療資源投入量が多く、高単価であることが前提であり、そのような中で、利益を生み出すための施策を考えたい。
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次回配信は10月15日5:00の予定です
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