医療分野でのビッグデータやAI(人工知能)の活用が注目される中、そのベースとなる医療情報の収集や活用を促す「次世代医療基盤法」が、5月に施行された。
医療分野では、現在でもナショナルデータベース(NDB)やDPCなどの大規模なデータが活用されているが、レセプトが中心であるため、問診内容や検査結果、治療の予後など、診療のアウトカムについては十分に反映されておらず、病院や診療所をまたぐ情報の収集も課題だった。
次世代医療基盤法では、ビッグデータの時代に合ったデータの収集がテーマとなっている。正式な名称は「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」で、医療情報を個人が特定されないように匿名加工し、医療分野の研究・開発に活用するためのルールが定められている。【大戸豊】
匿名加工されたデータはどのように活用されるのか。
例えば、実診療のデータを活用した治療の選択肢の評価だ。狭心症であれば、内科治療、手術、抗凝固剤を使用する治療など、その患者に最も適すると考えられる治療方法を、ビッグデータを基に解析し、評価する研究などが予想される。
また、画像データを分析し、AIなどを活用しながら解析を進めることで、診断精度を高めたり、糖尿病と歯周病のように、別々の診療科の治療効果の関連を明らかにし、歯周病の治療を行い、糖尿病患者の健康状態の改善を進めるといったことも考えられる。
このほかにも、医薬品の副作用の発生頻度の把握や比較が可能になり、安全性の向上につながる可能性もある。
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