(2018年6月20日に配信した記事の再掲です。内容などは掲載当時のものとなります)
【株式会社メディチュア代表取締役 渡辺優】
■入院医療費が伸びにくい環境に
前回、2009年度から16年度まで医療費の動向から、入院医療費が徐々に伸びにくくなっていることと、その伸び率が80歳以上人口比率と負の相関関係にあることを述べた。さらに都道府県別の各年度の数値でも同じことが言え、80歳以上人口比率が高い地域、すなわち高齢化が進んだ地域ほど入院医療費は伸びにくく、既に入院医療費が減少し始めているところも見られた。
グラフ1 入院医療費伸び率と80歳以上人口比率の推移
厚生労働省「医療費の動向」調査(2009-16年度)を基に作成
このような右肩下がりの環境下、病院がみな入院収入を伸ばし続けることは現実的ではない。ある病院が収入を増やせば一方の病院は減る、もしくは地域の病院みなが減る、という状況が現実味を帯びてきていると言えるだろう。前回述べた通り、現状と同じことをしていたのでは入院収入が増えにくいのであれば、それ以外のことで収入を確保するか、もしくは、収入が減っても利益が残るように費用構造を見直すことが必要だろう。
にもかかわらず、20年度までを対象期間として定められた新公立病院改革プランを見ると、非現実的と言わざるを得ないプランが散見される。弊社で無作為に抽出した200病院弱の改革プランのうち、病床利用率の実績値や目標値などが欠けていない145病院を対象に分析した。まず、病床利用率の平均値を見ると、14年度から15年度にかけ、実績値は減少傾向にある。だが、16年度の見込み値および17年度以降の目標値は右肩上がりになってくることが分かる=グラフ2=。病床高回転化の流れで利用率の維持は難しいにもかかわらず、プランでは伸び続けることを目指している。
なぜ、新公立病院改革プランでは病床利用率の目標が上がり続けるのか、145病院のデータ分析から考えてみる。
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