【岐阜大学医学部附属病院手術部 准教授 長瀬清】
「よい病院」とそうでない病院の違いを比較した論文がある。米国の49病院で悪性腫瘍手術後の合併症の発生頻度や術後死亡率を調査した研究(Wong SL. Ann Surg 2015;261:632-6)では、驚くことに術後創部感染症など合併症の発生頻度は、死亡率が高い病院でも低い病院でも同等であった。論文では、術後死亡率の違い、つまり「よい病院」とそうでない病院の違いは、合併症が発生した際の対応力の違いが原因と指摘されていた。
専門性が高い手術医療では、スーパードクターといわれる医師も1人では無力である。合併症の予防や術後トラブルの早期発見もチーム医療の役割である。チーム医療では、職種や専門性に上下や優劣はなく、患者の状態に応じてリーダーは常に入れ替わる。多職種が専門性を発揮する「よい病院」になるためには、チーム医療をどう推進したらよいのだろうか。
例えば周術期管理チームは、周術期医療の質向上を目指した多職種チームであり、手術件数増加を目指し、さまざまな病院で導入されている。合併症を減らしたい、業務を効率化したい、医療安全や医療過誤防止に役立てたいという希望があるにもかかわらず、うまく進まない施設も多い。
私たちは2015年に国立大学病院手術部43施設を対象に、周術期管理チームの現状をアンケート調査し、成果を挙げるコツを調べた(手術医学2016;37:312)。周術期管理チームが稼働していた施設は、どこも業務の標準化が達成されていると回答していた。次いで目標の共有、責任者や担当者の明確化、そして話し合いなど、コミュニケーションの場が設定されていた。一方で、権限移譲、教育などのノウハウ、成果の可視化、特定職種への業務の偏り、医療情報システムの整備、補助事務者などの支援、予算措置などに関しては、周術期管理チーム導入の有無で施設間に差が認められなかった。つまり周術期管理チームを稼働させるためには、まず業務の標準化が求められることが分かった。
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