【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 准教授 京極真】
Q 終末期の患者さんがとても落ち込んでいたので、「どうしたのですか?」と尋ねたところ、「家族が私の治療方針をめぐって対立している」と涙ながらに話してくださいました。以前も、終末期の患者さんの家族が争っていたことがありましたが、患者さんとご家族をどう支えたらよいか分かりません。
家族の信念対立は起こりがちです。傾聴と共感で家族の「心理的安定性」を支えつつ、合意形成を促していきましょう。
■家族の意見がバラバラになるのは珍しくない
多職種連携のメンバーの中にはご家族も含まれますし、患者と同様に意志決定において重要な役割を担います。しかし、終末期の患者さんの支援では、家族内で対立がしばしば生じます1)。例えば、Hamanoらが、がん患者遺族767人を対象に調査したところ、約42%が家族内対立を経験していました2)。その場合の争点は、「家族役割を果たさない」(約23%)、「治療方針について合意できない」(約21%)、「最期をどこで過ごすかをめぐって意見が合わない」(約11%)などがあるといいます。終末期の患者さんを支える家族は、家族内の役割分担、今後の方針、看取りの場所などについて、信念対立が生じやすい傾向にあると理解できるでしょう。
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