【医療法人大誠会内田病院 法人本部長 内田智久】
前回は、慢性期医療の質評価の要素として「適正量」「タイミング」「QOL(Quality of Life)」の重要性を示し、そのような考えに基づく当法人での認知症ケアのプロセス、アウトカム指標と実績について紹介した。患者の個別性を重視したリハビリや環境、薬剤などの調整回数がプロセスの指標であり、FIM(Functional Independence Measure)とDBDスケール(Dementia Behavior Disturbance scale)がQOLの指標になると想定した。このことを踏まえ、今回は、慢性期医療における質の評価と経営戦略という観点で直面した問題とそれへの対応策を紹介したい。
自院の質を評価する目的には、自分たちの個々の取り組みを客観的に評価することで、それぞれのパフォーマンスを向上させ、自院の特徴や強みを明らかにするという、2つがあると考えられる。そしてこれらの2つの観点は、自院の戦略もしくは戦術と自ずと結び付いてくる。
例えば、急性期医療であれば、救急搬送の受け入れ件数を指標にした場合、近隣の急性期病院と比べて自院はどうかや、受け入れをさらに増やすための方法を考える要素となる。評価結果が十分なものであれば、自院のセールスポイントとして大きな宣伝要素となる。さらに、「断らない救急対応」などの方針(戦術)が導かれる。従って、戦略や戦術から逆算することで、その病院の強みや実績を推し量ることが可能となる。このようなつもりで慢性期医療を見たところ、量的な観点での評価は、必ずしも十分なインパクトを得られるものではなく、自院の強みとして認識しにくく、結果として戦術と結び付けにくいという実態に直面した。
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次回配信は12月14日5:00の予定です
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