【虎の門病院事務部次長 北澤将】
■未熟な思い上がりを気付かせてくれた経験
気が付けば入職から四半世紀を病院で過ごした。入職当時の担当は「入院受付」だった。医師に入院加療の必要を告げられ、憔悴した面持ちで受付に来る患者さんの表情に慄然とした。2年目に担当になったのは、医事会計システムの「マスタ設定」だった。私の勤める病院では当時、医事会計システムを自製で運営していた。1800種類の薬品と優にその5倍はある償還医療材料のマスタは、医事課が登録・管理をすべて担っていた。診療報酬改定となれば当然、すべての品目を1点ずつ手作業で更新しなければならなかった。
マスタの設定価格に間違いがあれば、自己負担額とレセプトも間違った金額になり、患者と保険者に大変な迷惑を掛けてしまう。ただ、当時は一点一点手入力するしか方法がなかった。作業のボリュームは相当なもので、定時には当然終わらない。「こんな重要な仕事を入職して間もない自分に任せるとは、なんて理不尽でいい加減な病院だ」と怒り心頭、周囲に不満をまき散らしそうになった。
ここで自分の現状を呪い、職場批判に走れば恐らく“自壊”していたと思う。事務職が病院で仕事の成果を挙げるには、周囲との良好な関係が欠かせない。それは組織の“インフラ”ともいえるだろう。病院から求められていることを否定していれば、病院からも認められない。病院を認めないのに、自分を評価してほしいと願うのは、私の未熟な思い上がりだった。
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次回配信は11月6日5:00の予定です
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