【小倉記念病院 経営企画部企画広報課 PRプランナー 松本卓】
前回に引き続き、小倉記念病院(北九州市)の「コミュニケーション」をご紹介します。当院のコミュニケーションコンセプトは「地域」です。それはなぜか。
病院は地場産業です。特に当院のような心筋梗塞や脳梗塞の超急性期治療を得意とする病院では、マーケットは北九州近隣地域まで。つまり私たちはこの地域から選ばれるためのコミュニケーション活動を行えばいいのです。
■市民公開講座
市民公開講座は年12回程度開催し、年間の参加者数は約4000人です。
まず大切なのは集客です。講座のスタイルとして、大きな会場で多くの人を集める方法と、街の市民センターや集会所に出向き、数をこなしていく方法があると思いますが、当院は大きな会場で多くの人を集めるスタイルのため、集客数が少なければ費用対効果が薄れてしまいます。
ではどのように集客を図っているのか。結論から言うと広告です。何を当たり前のことをと思われるかもしれませんが、あなたは日ごろ、広告を注意深く見ていますか? ゴールデンタイムのCMは何千万円の製作費などと言われたりしますが、昨日の20時台に見たCMは何ですか? おそらく覚えていないと思います。つまり広告は見られるものではないのです。でも広告をしないと認知されない。矛盾しているようですが、簡単な話、見られる広告を作るしかありません。
当院ではデザイン会社を活用し、エッジの効いたデザインで注目させ、「いつ・どこで・誰が・何を行う」などの情報を届けるようにしています。
http://www.kokurakinen.or.jp/lecture/list/
写真1 市民公開講座の様子
ほかに集客で工夫している点は、QRコードから、講演する医師のメッセージ動画を見られるようにしたり、北九州近隣地域すべての市民センター・老人クラブへチラシを郵送したりしていることくらいです。
ユニークな広告表現をする医療機関が少ないので「他院がやらない新しいことに取り組む」病院のイメージが、市民公開講座に参加しない方にも広く伝わっています。
講座は医師の講演だけではなく、最新医療機器の紹介、胃カメラの実演、来場者への心エコー検査、実際に治療を受けた患者さんの体験談など、2時間を飽きさせないようにさまざまな企画を盛り込んでいます。
市民公開講座は、参加者に先々当院を選んでもらえることが目的でしたが、加えて参加者を“メディア”として活用する視点が必要と分かりました。つまり、参加者をインフルエンサー(周囲に影響を与える人)に育て、口コミの発生源にすることです。調査結果では、95%の参加者が地域で講座の内容を家族や友人に伝えていることが分かっています。参加者が地域で友人・家族に話したくなる講座を実施することが重要です。
(残り3744字 / 全4916字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】